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「俊さんの言葉…当時は意味わからなかったけど」日本代表FWゴール量産の背景に中村俊輔が「プレスやポストの質も上げながらね」小川航基27歳の告白
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byN.E.C. Nijmegen
posted2025/03/27 11:55

小川航基は今、オランダの地でFWとしての能力を上げようとしている
「最初の頃はただ勢いで点を取っていた感じですけど、横浜FCで結構な数のゴールを決められるようになってから、そういうことまでわかるようになったというか。『あぁ、味方を知るって大事だな』と」
2022年、横浜FCに移籍したばかりの小川はリーグ戦41試合に出場して26ゴールを記録し、J2得点王になった。その時期に、どうすればゴールを決める確率が高くなるのかを学び、FWとして生きていくための神髄に触れられたのだった。
俊さんの言葉…当時は意味までわからなくて
ただ、それを可能にしたのはゴールを量産するという経験に加えて、あるレジェンドの存在があった。
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中村俊輔である。
中村のキックの上手さについて多くの人が知っているはずだが、小川が受けた影響のなかで最も大きかったのは、意外にもキックではなかった。
「俊さんとはジュビロ時代にも一緒にやっていたんですけど、昔、よく言っていたんですよ。『(新加入選手が来たときには)この選手はこういうプレーできて、こういうところにパス出せるんだと知るところから始める』と。当時はその意味まではわからなくて、『そうなんだ』くらいに感じただけでした。ただ何故か、その言葉はずっと頭に残っていて。だから、横浜FCのときに『俊さんが言っていたのはこういうことなんだ!』と気づけたんですよね」
小川は先輩に頭を下げてアドバイスを求めるタイプではない。むしろ、「生意気な後輩」だと思われることも少なくなかったと自認している。
ただ、日本でもヨーロッパでも結果を残してきたレジェンドの言葉は、サッカーの本質を捉えたものだった。だからこそ中村の金言は小川の頭の中に残り続け、得点を量産する過程で、その本質を理解できたのだろう。
「あの言葉を聞いたときは、正直、意味はわからなかったのに、俊さんが言っていたことが今に結びついているんですよねぇ」
先輩との出会いを武器にゴールへの筋道が
サッカーを言語化する楽しさや喜びを知る大先輩たち(第2回で触れたGK八田直樹とのシュート練習もそうだ)のおかげで、小川のなかでゴールを奪うための考え方の解像度を上げ、言語化できた意味は実に大きい。得点量産の秘密を「感覚」という表現で終わらせずに済んだからだ。