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「俊さんの言葉…当時は意味わからなかったけど」日本代表FWゴール量産の背景に中村俊輔が「プレスやポストの質も上げながらね」小川航基27歳の告白
posted2025/03/27 11:55

小川航基は今、オランダの地でFWとしての能力を上げようとしている
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
N.E.C. Nijmegen
その準備がゴールの80%
小川航基の〈味方のクロスに合わせてゴールを奪う〉能力は、現在の日本代表のなかでも頭一つ抜けている。そのデータと本人の考え方については第3回で触れた。
では、強さの最大の秘密とは何なのか。
意外にも、相手DFとの競り合いや駆け引きはそこまで大きなウェイトを占めているわけではない、という。
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「相手ディフェンスとの駆け引きに勝ったとしても、ボールがそこに出てこなかったら、結局、得点には繋がりませんよね。大事なのは〈ボールがこのあたりに来るだろう〉と予想して、そこで合わせるためのポジションを開けられるかどうか。その準備が、ゴールの(成否を決める)80%くらいの要素を占めていますね」
具体的なシチュエーションはこうだ。
「僕の場合は、クロスを上げてくる選手がどのような体勢でボールを持っていて、どのくらいのプレッシャーが相手からかけられているのかをしっかり見ています。あとは、クロスを上げる選手のキックの調子がその試合でどうなのかを把握するのも重要で。例えば、1本目のクロスがニアで(相手DFに)引っかかってしまったら、次にクロスを上げるときには『ニアで引っかからないように強く蹴ろう』という意識が働くことが多くなると思うんですよね。だから、次はファーに来る確率が高いだろうと考えて、自分も動いていくというような感じです」
象徴的なのが、昨年11月のアウェー中国戦だ。54分に伊東純也からのクロスが上がったとき、相手チームの選手を筆頭に両チームの大半の選手たちの意識はニアサイドに向いていた。ただ、小川は一人だけファーサイドに逃げてフリーになり、ヘディングでゴールを決めた。
そのような状況が生まれたのは必然だった。実は、伊東の1つ前のクロスは低い弾道となり、近くにいたDFにクリアされていた。だから、次は「ファーサイドにクロスを入れてくるのではないか」と小川は予測できた。ゴールシーンで一人だけ違う動きをしてフリーになれたのは、「天性の感覚」によるものではなかった。
あぁ、味方を知るって大事だなと
なぜ小川はこれほどまで解像度の高い分析ができるのか。それはFWに求められている仕事で最も価値があるものはゴールだと考えているからだ。