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箱根駅伝“山特化は悪”なのか問題…別大マラソンで青学大・若林宏樹が壊した「スペシャリストは大成しない」固定観念 原晋監督は「最高。輝いていた」
posted2025/02/07 06:00

別大マラソンで初マラソン日本最高記録を更新して日本人トップの2位に入った青学大4年の若林宏樹。「山のスペシャリスト」がマラソンでも力を見せた
text by

山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
JIJI PRESS
「苦しかったんですけど、ラストレースだったので……ここで粘らないと10年間やってきた意味がないと思って頑張って振り絞りました」
2月2日に行われた別府大分毎日マラソン。日本人1位に入り、初マラソン日本最高記録も更新した青学大4年の若林宏樹は、解説を務めた原晋監督からの「苦しくなかったの?」という問いに、そう端的に答えた。
もとよりこれが現役最後の引退レースと決めて臨んだ大舞台だった。
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レース前、原監督とは「2時間10分が目標……でも実際は15分くらいだろうね」という話をしていたという。それがふたを開けてみれば、圧巻のレース展開で優勝したビンセント・キプチュンバ(ケニア)とラストまでマッチレースを繰り広げて見せた。記録も想定の遥かに上を行く2時間6分7秒の好タイムだった。
もちろんその好記録や「40km以上は走ったことがない。30km以降は落ちるだろう」という原監督の予想をいい意味で裏切り、最後まで粘り切った精神力は驚異的だった。
だが、個人的にそれ以上に驚いたのが若林のフォーム変化だ。
若林のフォーム変化に見る「上り特化」の特殊性
ちょうど1カ月前に箱根山中で見せた走りとは、まったく異なるフォームになっていたのだ。ちなみにこれは、先月開催された都道府県対抗駅伝での走りでも見られた変化だった。
山上りの5区では、明らかに意識的に腕を身体の前方で回転させるように振って推進力を上げていた。だが、都道府県や別大での平地の走りでは、いわゆる一般的な「美しいフォーム」に戻っていたのだ。
過去「山の神」と呼ばれた今井正人や柏原竜二といったクライマーたちは、少々の変化こそあれ基本的には平地のフォームのまま上りにアジャストしていた。彼らが5区を走るときは「上っているように見えない」「まるで平地を走っているようだ」という解説が決まり文句だった。