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箱根駅伝“山特化は悪”なのか問題…別大マラソンで青学大・若林宏樹が壊した「スペシャリストは大成しない」固定観念 原晋監督は「最高。輝いていた」 

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山崎ダイ

山崎ダイDai Yamazaki

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posted2025/02/07 06:00

箱根駅伝“山特化は悪”なのか問題…別大マラソンで青学大・若林宏樹が壊した「スペシャリストは大成しない」固定観念 原晋監督は「最高。輝いていた」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

別大マラソンで初マラソン日本最高記録を更新して日本人トップの2位に入った青学大4年の若林宏樹。「山のスペシャリスト」がマラソンでも力を見せた

 それだけ平地と上りでの走り方の差異が(少なくとも見た目の上では)少なかったといえる。その意味で、若林のようにここまで山と平地でフォームが変わるケースは珍しいように思う。

 この走りの変化からわかるのは、いかに若林が「山対策」を戦略的に行っていたのかということだ。年始の箱根後、若林はこんな風に語っていた。

「やっぱり自分の走り方を見つけて走るのが一番速い。山に向けたトレーニングはやっぱり特殊なので、全く平地が走れなくなります。でも、そこ(山上り)を追求する思いがあるなら、できることなのかなとは思っています」

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 山上りをあえて「別物」と理解したうえで、その攻略に特化した。それこそが箱根山中限定の独特なフォームにも表れていたわけだ。

「山はパワーとメンタル。特に上りに必要な大腿四頭筋のトレーニングには力を入れてきました。最後の追い込みとなる小涌園から動く選手と動かない選手の差は、体ができているかどうかだと思います」(若林)

 もちろん若林に生来の「上り適性」があったのは間違いない。ただ、それだけではなく、そこに山への長期的な戦略をプラスすることで歴代の「神」に並ぶほどのクライマーになったのだろう。

「山のスペシャリスト」は大成しない?

 一方でそんな若林のケースは、裏を返せば「山に特化する」ことへの批判を生んでもいた。

 もともと若林が高校時代から世代屈指のランナーだったことに加え、「箱根駅伝の山区間で活躍したスペシャリストたちは大成しない」といったステレオタイプが多くの関係者の間にあったからだ。

 今回の別大での若林の走りの大きな功績は、そういった固定観念を一気に崩したことだ。

 もちろんこれまでも実際は5区や6区で活躍した選手の中で、実業団や市民ランナーとして活躍した選手は数多くいた。だが、ここまで一般的なインパクトのある結果を残したケースはなかった。それが「山特化の弊害」という俗説を広げていたともいえる。

【次ページ】 続く青学大ランナーのマラソンはどうなる?

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