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「160cm以下はとったことがない」女子バスケ超強豪校に“156cmで入学→全国3冠”の快挙…ある代表選手の軌跡「小さいことを言い訳にしたくなかった」 

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石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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posted2025/02/15 11:00

「160cm以下はとったことがない」女子バスケ超強豪校に“156cmで入学→全国3冠”の快挙…ある代表選手の軌跡「小さいことを言い訳にしたくなかった」<Number Web> photograph by JMPA

女子バスケ日本代表でも一際小柄な身長が目に付く富士通レッドウェーブの町田瑠唯。小さくても活躍できる秘訣はどこにあるのだろうか?

 小さな司令塔は、華麗なパスでチームを引っ張り、世界中にその名が知られるようになった。

「実は東京オリンピックの前にSNSのDMで『小さくてバスケを諦めました』というメッセージをいただいたんですが、そういう人たちに小さくても通用するということを証明したかった。それが少しでも勇気になればうれしいし、何か伝わるものがあればいいなという思いでした」

 162cmと小柄だがコート上ではそれを感じさせないほど抜群の存在感を見せる。“パスの魔術師”と呼ばれる高度なパス、広い視野を生かしたトリッキーなプレイメイクやスピード、類まれなセンスで真っ向勝負を挑んできた。162cmという身長は確かにバスケットボール選手としては低い方だ。

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 だが、当の本人はそれをハンデだと捉えたことは一度もない。

「背は大きい方がもちろんいいですし、私も180cmを目指していたので幼い頃は伸びる気まんまんでしたよ(笑)。牛乳は好きじゃないからあまり飲まなかったけれど、高校時代は背を伸ばすためにひたすらぶら下がったりもして。

 ただ、たとえ試合のメンバーに選ばれなかったとしてもそれが身長のせいだとは一度も考えなかったですね。選ばれないのはそれ以外に理由があると思っていました。どんな場面でも身長が低いことを言い訳にしたくなかったし、それは今も同じ。逆にこの身長だからできることもある、そうポジティブに考えていました」

小さいからこそ…「他とは違うことをやろう」

 決して両親や指導者に促されたからそう思うようになったわけではない。気づいたときにはすでにそういうマインドでバスケと向き合っていた。

「そもそも負けず嫌いなんです。だから、やられたらやり返すために自分で工夫したり、次はこうしてみようというアイデアは常に考えていました。その繰り返し。他の人とは違うことをやろう、工夫しようという思考は自然と身についていたんだと思います」

 その原点は、強豪・札幌山の手高校時代までさかのぼる。

 入学当時、町田の身長は156cm。同校は「160cm以下の選手は過去に入部したことがない」と言われていた――。

<次回へつづく>

#2に続く
「女子もあんな風になるにはどうしたら…」NBA挑戦にBリーグ…盛り上がる男子バスケに女子代表・町田瑠唯が思うこと「まずは見に来てもらう機会を」

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