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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「1656安打349HRの掛布雅之が選出だが」“イチローの師匠”に谷沢健一、三冠王ブーマーは…野球殿堂「記者が投票数使い切っていない」問題
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/21 06:01
エキスパート表彰で王貞治、原辰徳とともに写真に納まる掛布雅之(代表撮影)
掛布の殿堂入りが決まると、スポーツ紙には1985年の「バース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発」の話題が紹介された。おそらくは40年前のこの出来事を覚えている記者たちが、掛布に投票したのだろう。巨人と並んで屈指の人気チームである阪神の21年ぶりの優勝は、多くの人々の記憶に残っている。
しかし、プロ野球は人気チームだけで歴史を紡いできたわけではない。人が来ない球場で、黙々と野球をしていた選手にも光を当てるのが、有権者たる表彰委員の責務と思う。
「バース・掛布・岡田」揃い踏みは盛り上がるだろうが
阪神では、掛布よりも安打数が少なく、タイトルも本塁打王1回だけの田淵幸一が、2020年にエキスパート表彰で殿堂入りしている。また三冠王2回のランディ・バースも2023年に殿堂入りした。その流れを受けての掛布ではないかとも感じる。さらに今年は昨年限りで阪神監督を退団した岡田彰布も再び候補となって、1年目から70票(48.3%)を獲得した。この「ノリ」で「バース、掛布、岡田」がそろって殿堂入り、となれば大いに沸くだろうが――それだけでいいのか、とも思う。
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「エキスパート表彰」の投票資格は「野球殿堂入りした者、競技者表彰委員会幹事、野球報道に関して30年以上の経験を持つ者」となっている。委員1名につき6人以内の連記ができる。つまり一人6票だが、今投票では1人4.7票しか入れていない。「プレイヤー表彰」もそうだが、持っている票を全部使わない現象が起きている。
エキスパートの場合、殿堂入りした野球人も投票資格がある。「あいつは俺より下だから」「あいつに殿堂入りの資格はない」と、切り捨てるのではなく、プロならではの視野の広さと「鑑定眼」で、功績ある選手を評価してほしい。
2000安打到達でもエキスパート表彰漏れした名選手も
実は2000本安打を打っていながら、すでに「エキスパート表彰」の候補からも漏れている選手が4人いる。土井正博(2452安打)、松原誠(2095安打)、山崎裕之(2081安打)、藤田平(2064安打)。彼らも球史に名前を刻むべき強打者のはずだ。
2000本安打をはじめとする大記録を達成した選手がなかなか殿堂入りできない。これ、実は打者だけである。投手は200勝、250セーブという「名球会」の入会基準を満たせば、ほぼ全員殿堂入りしている(200勝投手23人、日米通算2人、250セーブ3人)。殿堂入りしていないのは江夏豊だけだ。