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「日本人専属スタッフの有無は見直すべき」あるMLB球団職員の本音…日本人メジャーリーガー活躍の裏で賛否両論「身内意識が招く誤解」とは?
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/18 17:01
大谷翔平をはじめ、多くの日本人メジャーリーガーが活躍する今、改めて考えたい問題とは――
日本人スタッフで固まる環境は誤解を生みやすい
2024年シーズン、メジャー30球団の開幕ロースターには負傷者リスト入りの選手を含め、949選手が入った。トップは無論米国出身選手。その他は以下のように続いた。(*米自治領プエルトリコを含む)
1:ドミニカ共和国 108人
2:ベネズエラ 58人
3:キューバ 18人
4:プエルトリコ 17人
5:カナダ 13人
6:メキシコ 12人
7:日本 10人
・・・・・・・・・・・・・
11:韓国 3人
登録人数的には、日本はまだ大国とは言えないかもしれないが、メジャーでの日本野球への敬意、理解度という点では上位国にまったく劣らない。日本は決してマイノリティではなくなった。それは先人たちが道を開き、繋ぎ、残してきた実績、評価の賜物であろう。だが、評価を上げ、相互理解を深めてきた今でも、日本人選手には専属スタッフがつき、お世話をする傾向が続いている。
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今のメジャーで専属スタッフがついているのは、日本と韓国のアジア出身選手だけだ。スペイン語を話す上位各国の選手のために通訳は存在するが、彼らはみな球団が雇ったスタッフだ。選手が自分の契約のために連れてきたスタッフは基本、クラブハウスにはいない。賛否両論があるのは百も承知の上だが、“チーム・XX”のような日本人スタッフだけで固まりがちな環境を作ることは、コミュニケーションにおいてチームとの大きなミス・アンダースタンド(誤解)を生む要因を秘めている。
「身内意識」が招く問題
日本球界でも同じと聞くが、選手と近しいスタッフとの間には「体に起こった小さな異変」などをチーム首脳に報告しない傾向がある。もちろん選手の意向次第だが、報告すれば、試合に出場できなくなる可能性がある。選手を守るために働く身内意識。大きな問題が起きなければいいが、首脳陣にとって不測の事態、報告を受けていない異変が起これば、「何も聞いてない」「君らの報告とはまるで違う」という問題が発生する。
特にメジャーにおいては、チーム首脳への詳細な報告義務は必須だ。専属スタッフからすれば「選手のため」と守ったつもりでも、チームからすれば「報告義務を怠った」「雇用主は我々だ」となる。こんなところにも問題は潜んでいる。
メジャーには医療スタッフ等の専属スタッフの契約を認めない球団もある。有名なのがニューヨーク・ヤンキースだ。2000年前後、ステロイド使用が大きな問題となった際、伝統球団は選手が希望する専属医療スタッフの入団を認めなくなった。責任の所在、管理徹底のためだ。