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「走れることって、当たり前じゃない」青学大・鶴川正也はなぜ“消えた天才”にならなかった? “世代最強エース”が最後の箱根駅伝に「間に合った」ワケ
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/01/12 06:01
4年目にして初めての箱根駅伝を走った青学大の鶴川正也。元「世代最強ランナー」はなぜ一線級まで戻ってくることができたのか
そんな鶴川が、ようやくその真価を発揮したのは今季に入ってからだった。
昨年5月の関東インカレ5000mでは、留学生ランナーに競り勝ち優勝。6月に新潟で開催された日本選手権でも13分18秒51の屋外日本人学生新記録(当時)をマークして、学生最上位となる4位に食い込んだ。
レース後、鶴川はこんな風に語っていた。
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「何回もきつくなったんですけど、そこから粘れたのは一緒に走った後輩たちや、両親も見に来ていて……その人たちに、やっぱりかっこいいところを見せたかった。『こんなところで離されちゃいけない』と思って、踏ん張ることができました」
そして、苦難が続いた3年間を振り返りながら、こんな言葉を紡いだ。
「やっぱり走れていることって、こんなに幸せで、当たり前のことじゃないんだなと。両親が青学(大)に通わせてくれて、チームメイトと一緒に陸上をやることができる。それが本当に楽しくて、幸せで。最後1年間はそれを噛みしめて、悔いなく終わろうという気持ちでいるんです」
その言葉通り、駅伝シーズンに入っても鶴川の笑顔の大激走は続いた。
出雲駅伝で1区区間賞を獲得すると、全日本大学駅伝でもポイント区間の2区で、吉田響(創価大、4年)らの有力ランナーを相手に区間賞。満を持して最後の箱根路にエントリーされることになった。
なぜ「世代トップクラス」に戻ってこられた?
最後の1年間、ようやく「世代トップクラス」という本来いるべき立ち位置に戻ってこられた理由を、鶴川はこんな言葉で振り返る。
「やっぱり生活の部分が大きいと思います。睡眠をしっかりとるとか、食事の面もそうですし。週1回はトレーナーさんに見てもらって、ちゃんとケアをする。そういう部分ですよね。トレーニングだけじゃない。陸上競技って、メンタル面が5割……いや、それ以上なんだと思います。一見、関係ないように見えるんですけど、ちゃんと学校で勉強して、色んな誘惑に惑わされず、日々ちゃんと生活する。そういうことが一番、強さに繋がっていくんだと実感しました」
満を持して臨んだ年始の大舞台は、3区を走って区間4位だった。