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「まだまだできるって信じて」田中将大に手を差し伸べた巨人・阿部慎之助監督の思惑 …200勝問題に田中の反応は?「やり返したい気持ちはある」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/26 18:29
巨人入団会見に笑顔で応じた田中将大と阿部慎之助監督
21年シーズンは4勝9敗ながら、23試合に先発して投球回数は155回3分の2を記録。22年も25先発で163回を投げて復帰後最多の9勝(12敗)を挙げている。そして23年は7勝11敗に終わったが、24先発で139回3分の1としっかり投球回を稼いできているのだ。
その後23年オフに「右肘関節鏡視下クリーニング術」を受けたことで、今季はなかなか状態が上がらないままに3月20日のイースタン・リーグ、DeNA戦での登板を最後に8月まで実戦を離れるなど苦しい状態が続いていた。結果的に今季はわずか1試合の登板で5回を投げて6安打4失点で1敗という内容に終わっている。
しかし巨人の桑田真澄二軍監督はTBS系の「サンデーモーニング」に出演した際に「僕は活躍できると思います」と太鼓判。昨年の成績については手術の影響を挙げて、復活の可能性をこう語っている。
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「(21年から)過去3年で平均150イニング以上投げているんでね、これはおそらくリーグで5、6人しかいない、また5、6番目の数字だと思うんです。先発投手はいいピッチングをしても点を奪ってくれないと勝てない。巡り合わせが非常に悪かった。3年間、しっかり投げていると思いますし、今年は手術の影響で投げられなかったので、来年は活躍してくれると思っています」
こう来季の復活劇を予想しているのだ。
実績十分だが、心配な点も
もちろん本来持っている投手としての能力、ポテンシャルの高さはいうまでもない。実績も十分で、順調に行きさえすれば、こうした期待が現実のものとなる可能性もかなり高いと言えるだろう。
ただ心配なのは、肘の手術をしてまだ問題ないと言える投球を実戦で見せていないこと。そしてもう1つは3年間、150イニング以上、マウンドで投げてきた田中も、そこから来年は2つ歳をとるということだ。
今年の11月で36歳。30代半ばを過ぎた投手は、やはり己の肉体との勝負にどう打ち勝っていくか、あるいはその衰えを受け入れてどう上手に付き合っていくか。そこが最大のテーマとなるということである。
そのために一番大事なことは、とにかく無理せず、頑張り過ぎないこと、出来ることのラインを少しだけ下げることかもしれない。
過去に何人もの30代半ばを超えた実績のある投手が、復活を期して頑張る姿を見てきた。例えば巨人から横浜(DeNA)に移籍した前後の工藤公康投手やメジャーから日本球界に戻ってソフトバンクから中日に移籍してきた松坂大輔投手らである。
2人とも他を寄せつけない実績を誇る投手なのはいうまでもない。経験と知識もあり、言われなくても自分でトレーニングもしっかりこなす。晩年になってもマウンドに立つことを目標に、日々しっかりと練習をする。しかしストイックに自分を追い込むことで、逆に身体がついていけないことが間々起こるのである。
登板回避はその投手だけの問題ではない
先発のスケジュールが決まり、投手コーチが「どうだ?」と聞くと、多少の問題があっても、何とかしようと「いけます」と答えてしまう。しかし登板直前になっても思ったように状態が上がらず、もしくは身体が悲鳴をあげて、マウンドに立てる状態に持っていけなくなってしまう。
そして登板回避となってしまうのだ。