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「まだまだできるって信じて」田中将大に手を差し伸べた巨人・阿部慎之助監督の思惑 …200勝問題に田中の反応は?「やり返したい気持ちはある」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/26 18:29
巨人入団会見に笑顔で応じた田中将大と阿部慎之助監督
ただ先発投手の直前での登板回避は、その投手だけの問題では済まないから厄介なのだ。ファームにちょうど代役となる投手がいればいいが、穴埋めをするために他の投手のローテーションをいじらなくてはならなくなる事態も勃発する。
そんなベテラン投手たちが、現役の最後の頃に、そこで他の投手と軋轢を生んでしまうシーンを何度も見たことがある。
田中の場合はまずはあと3勝と迫った日米通算200勝という大きな節目がある。
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「ここ数年ずーっと聞かれて、ずーっと答えて、ずーっとクリアしていないので、いい加減クリアしたいな、と。そこに対しては自分もフラストレーションが溜まる部分もありますけど、一気に勝てるわけではないので、まずは先発ローテーションに入れるように」
「200勝問題」を聞かれ、田中は…
田中は“200勝問題”を聞かれると、苦笑いを見せながらこう語って、「結果としてのあと3勝」を強調した。同時に決して今回の巨人との契約が自らの200勝へのこだわりではないことも語る。
「いろいろ残り3勝だというところがフォーカスされますけど、3勝で終わるつもりはありません。勝利に貢献したいと思います。そして自分自身のこれまでの経験を若い選手に伝えていきたいと思います」
記録のためではなく、自分のアイデンティティーをかけて、マウンドに登る。だからこそ決してムリをすることなく、頑張り過ぎずに、どこまでチームのために戦うことができるか。そういう意識を持てれば巨人にとって、田中の加入ははかなり大きな戦力になる可能性があるのだろう。
「2024年シーズン、これほど全て振り返って野球で何もできなかったシーズンというのは初めてだったので、やはり、めちゃめちゃ悔しかったです。2025年、やり返したい気持ちはありますし、チームは変わりますけど、自分ができることを常に頭に置きながら行動していきたいと思います」
日本球界に復帰した2021年の真っ直ぐの平均球速は147.1kmだった。それが23年は146.4kmに落ちて、昨年はわずか1回の登板だったが、その試合の平均球速は143kmだった。球速がすべてではない。ただそれもまた歳をとり、肉体が少しずつ以前と変化してきている一つの証なのかもしれない。
「やりがいを感じたい。ジャイアンツからお声がけがあり、嬉しかった。一番熱くお声がけして頂いた。迷うことはなかった」
移籍の経緯を思うと、気負う気持ちは十分に想像がつく。でも焦ることなく、じっくり地に足をつけて、自分のペースでマウンドへの道を進んで欲しい。それができれば復活の狼煙は、きっと上がるはずである。