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ジャッジ2人がドヘニー支持も…井上尚弥は4回までにインプット完了! 元世界王者・飯田覚士が「びっくりした」王者・井上の“揺さぶり返し”―2024下半期読まれた記事
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/12/24 11:01
ドヘニーを7回TKOでくだした世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥。この一戦のポイントを元世界王者・飯田覚士氏が徹底解説した
井上がドヘニーを研究したように、ドヘニーもまた井上対策を十分に積んできたことは飯田も理解できた。スティーブン・フルトン、マーロン・タパレスがやったように前足を突っ張り気味にして井上の踏み込みを邪魔し、重心を後ろに置いた。
「ボディーをもらわないようなガードの位置、それに頭を忙しく動かしていくというのはかなり意識していたように見えました。(井上に)来られたら、その位置から動いて無理やりにでもエスケープしていたので」
王者・井上の“揺さぶり返し”
井上優位で終えた1ラウンド。もちろんドヘニーにしてもツーステップを踏めない想定はしていただろう。王者を揺さぶってやろうとするドヘニーを、井上が逆に揺さぶり返していく。
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「びっくりしましたね。2ラウンド、ドヘニー選手が軽やかにステップを踏み始めてスタートすると尚弥選手も同じようにステップを踏んで応じたんです。さあアップテンポしていこうとしたところで、ここも言わばつぶしに掛かってきた。実は1ラウンドもそうでした。ドヘニー選手があまりステップを踏まないと分かると、尚弥選手までステップを踏まなくなりましたから」
距離をつぶすプレスのみならず、精神的な圧力まで。自分に合わせてくるモンスターの不気味さが、ジワジワとドヘニーにしのび寄る。井上対策のための後ろ重心が、いつしか及び腰の意味合いが強くなっていくようだった。
なぜここまで丁寧かつ慎重な「入り方」だったのか。前回、ルイス・ネリとの対戦で1回に左フックを浴びてプロ初のダウンを喫したことと無関係ではないと飯田は読む。
「要はネリ戦の過ちを繰り返さないぞ、一発ももらわないぞ、と。丁寧に戦おうというテーマが、尚弥選手のボクシング自体を変えてしまったくらいのイメージですね」
ジャッジ2人がドヘニーを支持するも…
3ラウンドに入ると、リスクマネジメントの範疇内で敢えてドヘニーに手を出させている。これも相手をより追い詰めていくために必要な過程だと見ていい。