オリンピックへの道BACK NUMBER
バドミントン協会“相次ぐエントリーミス”のナゼ…じつは削減されていた“5億円の予算”、五十嵐有紗「何回も言っている」声明に滲んだ危惧
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/04 17:00
相次ぐバドミントン協会のエントリーミス。パリ五輪で銅メダルを獲得した五十嵐有紗も意見を表明していた
また、選手にとって予定していた大会に出場できないことの重みも伝わってくる。バドミントンは、世界ランキングに基づいてオリンピック代表が決定する。ランキングは大会のポイントによって決まる。パリ五輪を巡っても、日本の選手たちによって、ランキングが近接する激しい争いが行われていた。大会に出られなければその影響は小さくない。
先にあげた事例で言えば、大堀は日本勢で山口茜に次ぐ2番手を奥原希望と争う位置にあり、2024年4月になるまで決着がつかないほどだった。また、ポイントによって出られるグレードが変わってくることもこの問題にかかわってくる。
協会会長の“謝罪の中身”を読み解くと…
会見で村井満会長はこう謝罪している。
「ヒューマンエラーが放置された状態を認識しながら、強化本部に委ねていたことは私の責任です。他の競技団体で、こんなにだらしないところはないと思います」
前提として、世界バドミントン連盟の規定として、選手のエントリーは各国の協会が一括して行うことになっている。だから協会側にミスがあるからといって、選手側で行うわけにはいかない。だから協会に委ねることになる。
協会は、相次いだミスの要因は人為的なものであるとし、エントリーの作業を担うのは「1.4人」であることを明かした。担当者1名と常駐でない者の支援を含めての人数だ。
選手の所属先からエントリーの依頼を受けると、入力してリスト作成などの作業を行い、エントリーする流れだ。
打ち込みなどといったミスが起こり得る状況であること、エントリー締切後にも所属先から依頼されることがあり、その対応、さらにダブルチェックの不十分さなどを要因として挙げた。
作業からすると、打ち込みには間違いがつきものだし、複数の目でチェックする必要性を考えても、まず、携わる人数が少ないのは否めない。
ミスを生む“根本の原因”?「5億円の予算削減」
再発防止策として、担当を3~4人に増やし、国際大会エントリー専用のメールアドレスを作る、複数人の目を通すよう受信者に強化本部長と2人を追加、世界バドミントン連盟からの申請完了通知を所属先にも送り2段階で確認、所属先からの依頼の締め切りの徹底をあげ、今後、入力をシステム化することも検討するという。何度かミスが続いて、防止策を打ち出したことになる。「もっと早く改善を」という思いに駆られる選手がいても不思議はないだろう。
背景としては、協会の強化費が大きく削減されたことなど資金の面もある。