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22年前の「もうひとつの大社旋風」…なぜ“島根の県立高”陸上部が「インターハイで総合優勝」できた? 原動力だった“伝説のエース”の正体 

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山崎ダイ

山崎ダイDai Yamazaki

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posted2024/09/08 11:02

22年前の「もうひとつの大社旋風」…なぜ“島根の県立高”陸上部が「インターハイで総合優勝」できた? 原動力だった“伝説のエース”の正体<Number Web> photograph by Getsuriku

22年前、陸上インターハイで総合優勝を果たした島根・大社のエーススプリンターだった野田浩之。全国大会では4種目で入賞を果たした

 大会4日目には、その野田が200mでも3位に入り、さらにポイントを加算。

 岡先が述べたように、基本的に陸上競技は学校全体のポイントで競う総合得点ではなく、個人の結果を出すために全力投球するものだ。だが、さすがに部員たちもここまでくると「本当に総合優勝もあるかも……」という気持ちになっていたという。

 チームを率いる持田清道監督からは、「最終5日目に9点取れれば勝てる」と言われた。ライバルは伝統的に短距離種目に強い八王子(東京)と、この年、留学生を長距離種目に起用してポイントを荒稼ぎしていた流経大柏(千葉)の2つの私立校。「9点」という得点は、その2校の戦力を睨んでのものだった。

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 最終日には大黒柱の野田を擁する1600mリレーと、岡先の円盤投が控えていた。

 野田は、プレッシャーがかかるのを承知で岡先に「リレーは頑張るから、あとはお前次第だからな!」と声をかけてきたという。

「自分は案の定、初日の砲丸投は予選落ちで終わってしまって。それでも最終日の円盤投は予選を1投で通過できたので、その後はとにかく体力を温存しました。決勝も結局、1投目がベスト記録だったんじゃないですかね。なんだか最後まで省エネな投擲になってしまいました」

 それでも岡先はなんとか4位に入賞。

 そして最終種目の1600mリレーでも、この大会12レース目の全力疾走にも関わらず、野田がアンカーで獅子奮迅の激走を見せ、順位を上げて4位。目標だった9点を上回る10点を獲得した。

 こうして非常に珍しい「普通の県立高」のインターハイ総合優勝は成立したわけだ。

後のメダリストも破った「大エース」の存在感

 快挙の中心にあったのは、もちろん野田という大エースの活躍である。野田はこの大会では後の五輪メダリストである高平慎士(旭川大)や塚原直貴(東海大三)といった有力選手たちにも先着している。

 優勝した400mリレーの第1走を務めた神田淳はこう振り返る。

「やっぱり野田の存在は大きかったですよ。リレーも周りは強豪校ばかりでしたし、自分たちが何となくナメられているのは感じていました。大会前はあくまでチームとしては伏兵扱いでしたしね。でも、普段から野田と練習しているわけで、周りに対して『さすがに野田より速いことはないだろう』と気持ちで負けなかったのは大きかったと思います」

【次ページ】 高校で日本一…でも皆が競技継続しなかったワケは?

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