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「本当は打撃のチームを作りたいけど」京都国際監督が覗かせた本音…低反発バット元年の甲子園で見えた課題に、今こそ「リーグ戦」の検討を 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2024/08/27 11:05

「本当は打撃のチームを作りたいけど」京都国際監督が覗かせた本音…低反発バット元年の甲子園で見えた課題に、今こそ「リーグ戦」の検討を<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

京都国際は、中崎と西村(写真)という2枚の左投手で最後まで守り勝った

 大会前の注目として、得点が見込めない中、どんな野球をするかが鍵だというコラムを書いた。バント、エンドランを駆使して緻密に攻め、守備は堅実に守る。いわゆるスモールベースボールに徹するのか、それとも、これまでのように、パワー野球で挑むのか。あるいは、本来はパワー野球を主眼とするが、今年に限りスタイルを変えて挑むのか。

 大阪桐蔭、智弁和歌山、健大高崎、花咲徳栄といった強豪校がよもやの2回戦までで敗退を喫し、関東一がスモールベースボールの頂点のような試合をする明徳義塾に競り勝った勢いのまま、攻撃型の東海大相模を破る。そして、九州の雄・神村学園も守備力で上回って勝利。一方、京都国際は3試合で完封勝ち。準決勝では東北のタレント集団・青森山田の行く手を阻んだ。

スモールベースボールが「正解」なのか?

 この結果だけを見ると、スモールベースボールこそがこのバットで勝ち進んでいける野球であるという思想が席巻しそうな予感さえするが、果たしてそれでいいのかという疑問も残る。ひとつ言えるのは、バットの変更によって得点力が下がったのは、必ずしもそれがすべての原因ではなく、技術力がまだ未熟だったからだ。

 特に、今年の3年生は入学してからのルールとは異なるバットに対応しなければならなかった。それも、2年秋の大会までは旧バットで、センバツからルール変更という歪な形に合わせなければいけなかったのは大変だっただろう。2年連続ベスト4の神村学園のように「ルール変更に合わせて、3年前から外部のトレーナーを入れてバッティングに取り組んできた」というチームもあったものの、それは主流ではないし、どのチームでもできることではない。

 高校野球界が制度改革をしていく上では、どこかの世代がその影響を受けなければいけないのは仕方のないことだ。とはいえ今大会で、本来目指すチームスタイルとは違う戦い方を強いられたチームがあった現実を受け止めなければならない。

【次ページ】 「負けられる」環境の重要性

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