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<龍角散presents エールの力2024⑤>「プリンセス・メグには抵抗があったけれど…」。栗原恵を日本のエースに成長させた大声援の力。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byAFLO

posted2024/08/16 11:00

<龍角散presents エールの力2024⑤>「プリンセス・メグには抵抗があったけれど…」。栗原恵を日本のエースに成長させた大声援の力。<Number Web> photograph by AFLO

 栗原さんが日本代表だった頃は主要大会の多くが日本開催。

「ありがたいことに、ホームの大きな声援に助けられていましたが、その分、アテネや北京といったアウェーの大会では難しさを感じることが多かったです」と言う。

 例えば2017年まで開催されていた「ワールドグランプリ」。最初の頃、栗原さんは海外ラウンドに行くとモチベーションの作り方に苦労することがあったそうだ。

「どんな状況でも試合にはもちろん集中して入りますが、声援が少ない時は自分で奮い立たせないといけないということを学びましたね。逆に、連戦で疲れている時でも観客の声援があると1センチでも高く飛べるようなイメージがあります」

 バレーボールでは試合中に選手同士が声でコミュニケーションを取っている様子が多く見られる。具体的にはどんな会話がなされているのだろうか。栗原さんがこのように説明する。

「例えば、相手コートのどのゾーンが空いているのか、どのゾーンが閉まっているのか、ブロックは何枚来ているのかなど、具体的な指示を味方同士で話します。観客の声にかき消されないように、相手に聞こえても構わないくらい大きな声でコミュニケーションを取っています」

 声はチーム全体の意思疎通や互いに鼓舞し合うためだけのツールではない。意外にもレシーブする時にも声を出しているそうだ。

「レシーブの体勢に入った時、固まって待つのではなく、息を吐きながら声を出すことで自然と力が抜け、反応速度が速まります。凄い選手はブロックの上から打ってくるのが見えるので一瞬、怖いなと感じて固まってしまうのですが、息が止まっていると不意にフェイントされた時に一歩が出ないんです。ボールが襲いかかってくるような状況でも声を出し続けることで怖がらずにプレーすることができますし、ブロックでワンタッチしてくれたボールを取りに行く時の一歩目も速くなります」

「メグ・カナ」ブームの陰で、筋トレに励む

 しなやかなフォームから繰り出される高い打点のスパイクで次々とポイントを奪う栗原さんは、前述の通り「プリンセス・メグ」の愛称を持つ超人気選手だった。ただ、春高バレーで活躍して注目されるようになった高校時代から“人気に溺れることのないように”と指導されてきた栗原さんには、「プライベートではあまり目立たないようにしよう」という思いもあった。

 そういった経緯もあり、初出場となった2003年ワールドカップのメンバー発表時にキャッチフレーズとしてつけられた「プリンセス・メグ」のニックネームには少なからぬ反発を覚えたという。

 会見では仕方なく、「MEGU」と入ったユニフォームを着て壇上に上がったが、栗原さん自身の強い要望で背中のネームは「KURIHARA」へ変更。試合では一貫して「KURIHARA」の名入りウェアを着用した。

【次ページ】 短い母との会話でも、その声から大きな力を。

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