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ホームラン激減だけでない…“異様な貧打”プロ野球5つのデータ「ピッチクロックなしで時短」「統一球時代と比べても」問題の根本は? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2024/07/23 11:01

ホームラン激減だけでない…“異様な貧打”プロ野球5つのデータ「ピッチクロックなしで時短」「統一球時代と比べても」問題の根本は?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2024年のプロ野球はロースコアの展開で進む内容が多い。データや成績で見ると、どのようになっているか

〈OPS〉
 2020年:セ.714/パ.703/イ.720/ウ.690
 2021年:セ.698/パ.683/イ.719/ウ.675
 2022年:セ.678/パ.668/イ.698/ウ.682
 2023年:セ.668/パ.664/イ.698/ウ.661
 2024年:セ.625/パ.643/イ.660/ウ.650

 セ・パ、イ・ウの4リーグとも、7割前後だったOPSは、ここ5年で下落し、6割半ばの水準まで下がっている。かなりはっきりした失速だと言えよう。

 イースタンとウエスタンには今季、オイシックス新潟、くふうハヤテという新チームが入り、リーグ環境は変化しているが、大きく見て4つのリーグは同じ「投高打低」に傾いている。

 1試合当たりの本塁打数では、もっと顕著な数字になっている。

 〈HR/G〉
 2020年:セ0.94/パ0.85/イ0.80/ウ0.52
 2021年:セ0.89/パ0.80/イ0.79/ウ0.55
 2022年:セ0.81/パ0.71/イ0.69/ウ0.54
 2023年:セ0.75/パ0.71/イ0.64/ウ0.52
 2024年:セ0.52/パ0.52/イ0.46/ウ0.34

 4リーグ共に本塁打数が前年の30%前後減少しているのがわかる。

 今回の「投高打低」の特長は、打撃面が総じて減退しているだけでなく、とりわけ長打、本塁打が減少していることだ。本塁打が極端に減少しているのは、試合を観戦していても実感するが、それはやはり「ボールが飛ばない」ということなのか?

(4)2011年の「統一球」導入の時はどうだったのか

 参考までに反発係数が低い「統一球」が導入された2011年と前年の2010年の一、二軍4リーグのOPSとHR/Gの推移はこうなっている。

〈OPS〉
2010年 セ.740/パ.703/イ.749/ウ.714
2011年 セ.642/パ.656/イ.681/ウ.656

〈HR/G〉
2020年 セ1.00/パ0.86/イ0.85/ウ0.68
2021年 セ0.56/パ0.53/イ0.49/ウ0.45

 4つのリーグとも同じ傾向を示している。ボールが突然飛ばなくなって、投手戦が急増し、球界は大混乱に陥ったことを、今も思い出す。このボールの導入を決めた当時の加藤良三コミッショナーが釈明のコメントをしたのを覚えている。この時には、反発係数の規定を下回るボールが一部出回っていたことがわかり、メーカーが対応に追われた。

 しかしながら、今年のOPS、HR/Gの数値は、大混乱に陥った2011年をさらに下回っている。これは由々しき事態ではあろう。

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