酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ホームラン激減だけでない…“異様な貧打”プロ野球5つのデータ「ピッチクロックなしで時短」「統一球時代と比べても」問題の根本は?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/07/23 11:01
2024年のプロ野球はロースコアの展開で進む内容が多い。データや成績で見ると、どのようになっているか
なお、2011年、未曽有の「貧打」の時代にありながら、西武の中村剛也が48本塁打で3度目のタイトルを獲得した。この本塁打数はパの総本塁打数454本の10.6%に当たり、千葉ロッテのチーム本塁打46本を上回っていた。
この年の中村剛也の無双の活躍は、球史にはっきり刻まれるべきだと思う。
今回は当時の中村のような図抜けた打者はいないので、両リーグともに本塁打王は30本前後に落ち着きそうだ。
(5)ストライクゾーンは変わっていないのではないか
最後に「ストライクゾーンが広くなったのでは」という指摘が一部に出ているが、数字的に見ておこう。
ストライクゾーンが広くなれば、三振数が増え、四球数が減るはずだ。三振を四球数で割った数値をK/BBというが、K/BBの数値は上昇することになる。
この数値について、以下がセ・パ、イ・ウ4リーグについて2020年から5年間の推移。
〈K/BB〉
2020年:セ2.33/パ2.07/イ1.89/ウ2.14
2021年:セ2.55/パ2.24/イ1.95/ウ2.31
2022年:セ2.72/パ2.49/イ2.04/ウ2.06
2023年:セ2.71/パ2.39/イ2.13/ウ2.45
2024年:セ2.65/パ2.49/イ2.07/ウ1.91
今年、特にK/BBの数値が上昇したと言う傾向は見られない。断定はできないが、ストライクゾーンに変化はなかったのではないか?
NPB審判部は、ストライクゾーンの改定をする際には公表している。それ以外に、細かな見直しやチェックは実施しているが、意図的にストライクゾーンを見直したのではないと思う。
プロ野球の一軍も二軍も本塁打が激減し、投高打低に急傾斜している。
このこと自体は「良いことでも悪いこと」でもない。今季はホームランこそ少ないものの、接戦が多くなった。NPB一軍の観客動員は、史上最多を更新しそうな勢いだが、顧客満足度は決して低くはない。観客席からはそう実感できる。
問題は「誰も意図したものではない」ことでは
問題はこの投高打低が「誰も意図したものではない」ことではないか。
アメリカでも日本でも、プロ野球の統括機構は、試合運営をコントロールする責務を担い、試合が適正なバランスで行われるように常に注意を払わなければならない。
今のNPBは「原因はわからないが、投高打低が非常な勢いで進んでいる」。これは、NPBのマネジメントを考えるうえで、好ましいことではないだろう。
NPB機構は、メーカーや有識者の協力を得て、非破壊検査、破壊検査を行い「なぜこうなったのか」を明らかにすべきだろう。