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悲願のBOSJ優勝翌日に男色ディーノと“生尻披露”…エル・デスペラードのプロレスはなぜ自由なのか?「みんなに好かれようなんて思ってない」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/06/14 17:10
2度の準優勝を経て、3度目の正直でBOSJ初優勝を果たしたエル・デスペラード。翌日には自主興行で「まさかの姿」を披露した
BOSJ優勝翌日に男色ディーノと“生尻披露”
デスペラードは特別な動きをするわけではない。空中戦が華麗なわけでもない。できることを精一杯やった結果が今につながっているだけだ。
優勝した翌日の6月10日、デスペラードは後楽園ホールで自身のイベント『DESPE-invitacional』を開催した。このイベントを決めた時点で、デスペラードは前日の大阪城ホールでの『DOMINION』がBOSJの決勝になるとは思っていなかったからだ。
結果として、特別興行は優勝祝賀会ムードの異色な“デスペラード祭り”になった。
「この人たちがやったら面白いだろうなっていうのを、いくつか用意させてもらいました。実際、オレもこの試合がどうなるかわからん。あとね、キミたちが求めている形になるとも限らない。オレも想像がつかん、実際に。でも、賛否両論あるのがプロレス」
そんなオープニングの挨拶をしたデスペラードは第1試合の混合タッグで下田美馬と組んで、ドラゴン・キッド、スターライト・キッド組と戦った。
さらにこの日2試合目の出場となったメインイベントでは、男色ディーノと組んで、外道、ディック東郷組とタッグマッチ。過激なコスチュームで“生尻”を披露し、口づけをかわす場面もあった。予想を超える展開に観客は喜んでいた。
「これは新日本の本筋と全く関係ないお話なので。マルチバースだからね。メイン見て怒っちゃった人もいっぱいいると思うけど。オレもこうなると思っていませんでした。覚悟はしていたけどね。ありがとうございました。超楽しかったっす」
デスペラードは自分自身の感性で生きている。
「みんなに好かれようなんて思ってないよ、別に。面白いと思ってくれるヤツが、面白いと思ってくれれば、それでいいよ。『それだとプロレス広まんねえよ』って言われれば、それまでだけどね」
デスペラードは自らデスペラードをフォローしようとはしない。なるように、ありのままで行こう、という姿勢が感じられる。「相手の中に自分との関係性」を見つけて、そこでどう戦っていくかというタイプのようだ。
それでもブレイクするのには時間がかかった。かつてギターを手に新日本プロレスのリングに登場したマスクマンに、現在のようなイメージや期待を抱くことはできなかった。
デスペラードはしみじみと実感を込めてこう言った。
「時間はかかりましたけど、必要な時間だった」