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「死んでもいい覚悟なんていらねぇんだよ!」葛西純はエル・デスペラードに何を伝えたのか? カメラマンが激写した“血と熱狂の23分30秒”
posted2022/09/15 17:01
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
葛西純の入場曲『DEVIL』が流れると、声出し応援可能な場内のテンションは最高潮に達した。リングで待つ白いマスクのエル・デスペラードも、手と足と頭でリズムを取り、満員の観客と共に葛西コールを楽しんでいた。
まだ観客の1人だったころ、デスペラードが会場で唯一コールしたことがある選手が葛西だという。憧れの存在との3年ぶり2度目のシングルマッチを目前に、ワクワクが体中から溢れていた。
「死んでもいいくらいの覚悟」で臨んだデスペラード
3年前の初遭遇では、凶器攻撃がエスカレートし、無効試合となった。デスペラードはアゴを骨折し、直後に控えていたBOSJ(ベスト・オブ・ザ・スーパー・ジュニア)を欠場することになってしまったが「楽しくてしょうがねえ。これが刺激か、最高だぜ」とコメントを残した。
結果的にBOSJだけでなく5カ月もの長期欠場となったが、試合の中での高揚感を「刺激」という言葉で理解するようになった“ならず者ルチャドール”は、新日ジュニアの中で急速に存在感を増し、2021年2月にはIWGPジュニアのシングル王座を初獲得。発言権を得た彼は新日本で最も注目を集める選手の1人となり、その立場を自身の楽しさの追求のために活用しようとする姿はますますファンを惹きつけた。
そんなデスペラードは、今年5月に開催された『タカタイチマニア2.5』でのタッグマッチで久々に葛西と激突。試合後、葛西からの薔薇を受け取りシングルマッチでの再会が約束された。
ようやく訪れたシングルでの再戦に、デスペラードは「引退してもいい、と思えるくらい、今の俺を全部絞り出して全力で戦う」「死んでもいいくらいの覚悟」という言葉を使った。葛西がいなければ今の自分はなかったからだ。3年前のシングルマッチがなくても、今の自分はなかった。7月にはアメリカでジョン・モクスリーとのハードコアマッチが行われたが、それが実現したのも「葛西と戦った男」だからだった。
今の自分を作った存在との戦いに、並大抵の気持ちで臨めるわけがない。