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葛西純「新日本プロレスでこんなのアリ?」有刺鉄線、竹串、大流血…エル・デスペラードの“超刺激デスマッチ”でカメラマンが目にした熱狂
posted2023/07/09 17:00
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
7月5日、後楽園ホール。
男がコーナーに登ろうとすると「もしかしてアレをやるのでは?」という期待が会場に充満した。トップロープに立った彼は、ゴーグルをつける仕草をし「シュワッチ!」ではなく「シャキーン!」とスイッチを入れた。
そして、“透明なゴーグル”を装備したマスクマンの敬礼とともにホール中から一斉に「シェー!」の声が発せられると、エル・デスペラードはリングに倒れているジョン・モクスリーに対して、“デスマッチのカリスマ”葛西純の代名詞のひとつであるパールハーバースプラッシュで飛び込んでいった。
前日にデスペラードとタッグを結成した葛西が、新日本プロレスを象徴するエース・棚橋弘至と並んで解説席に座る目の前で繰り出した渾身の一撃。しかし、カウントは2。刺激的な試合は、アドレナリンの向こう側に突入していった。
エル・デスペラードが求めた“新たな刺激”
デスペラードと葛西の物語は『タカタイチ』の舞台で紡がれてきた。2022年9月の『タカタイチデスペマニア』で実現した3年ぶりのシングルマッチは、年間最高試合の最終候補に残るほどの壮絶な戦いの末、デスペラードが勝利。両者の関係はより一層特別なものになった。
新日ジュニアのトップティアに位置すると同時に、「デスマッチで葛西純に勝ったことがある男」という異例の存在になったデスペラードは、国内外のデスマッチファンからも一目置かれるようになる。今年6月には、アメリカ・GCWのデスマッチワンデイトーナメントにも参戦した。
「刺激」をコンパスに唯一無二の道を歩む男は、次なる刺激をハードコアマッチの猛者であり、WWEグランドスラム達成者でもある“狂犬”モクスリーに求めた。
モクスリーとは昨年7月にアメリカでノーDQマッチを敢行し、デスペラードは有刺鉄線ボードを自作。当然それ以外の凶器も登場し、解説を務めた永田裕志は「新日本のリングではこのようなアイテムを使った試合はやらないでしょうね」と述べていた。激しい流血戦は、モクスリーがブルドッグチョークでレフェリーストップ勝ちを収めている。
リベンジを期すデスペラードに対し、モクスリーは「ホミサイドをパートナーにして戦ってやる」と返答。7月4日、デスペラードは葛西との初タッグを実現させ、超刺激的なカードが生まれた。