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バレーボールPRESSBACK NUMBER
“ヤンチャ坊主”西田有志を育てた肝っ玉母ちゃんとマジメな父「タバコ吸いたいなら吸え」悪さしてもバレーボールだけは一生懸命だった
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVolleyball World / Nishida family
posted2024/06/08 11:02
(右)賞状を手に写真に収まる中学時代の西田有志
目指すは全国大会。最初のチャンスは高校2年の冬。あと1回勝てば、念願の春高バレー出場が決まる三重県決勝。海星高は松阪工高と対戦した。
前半からひたすら打ちまくった有志は「打てば決まる」という表現が決して大げさではないパフォーマンスを発揮したが、リードして迎えた第4セットに異変が生じた。片脚を「攣った」と自覚した直後、反対側の脚も攣り、身体中が動かなくなり、プレーを続行することができずに交代を余儀なくされた。
得点源を失った海星高はそのまま試合に敗れ、責任を一身に背負った2年生エースは治療を受けながら地面に突っ伏して泣いた。
「ほら見てみ、お前のせいで負けたんやぞ」
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負けた悔しさを全身で表現する有志を見て、周りは「よう頑張ったと言ってあげて」と美保さんを促す。普通ならそうかもしれないが、この母子はその“普通”では語れない。
泣いている有志のもとへ行った美保さんは、こう言い放った。
「ほら見てみ、お前のせいで負けたんやぞ」
突き刺さる母の言葉に、有志がまた泣く。美保さんは「当たり前でしょ」と振り返る。
「決勝は5セットマッチ。心肺機能もまだ高まっていないから、ちゃんと走り込んで体力が持つようにしなさいと言ったのに、人の言うことを聞かず、『大丈夫、大丈夫』って。結果的に全然、大丈夫じゃない。お前のせいでしょ。言い返すだけで、人の言葉を聞かない。だから負けたんやろ、と現実を教えたんです(笑)」
母の厳しい言葉は有志のハングリー精神を掻き立てた。翌夏、海星高はインターハイ出場を果たす。有志にとってもようやく大きな壁を一つ破った大会となった。
ただ、振り返ればそれもストーリーの序章に過ぎない。その先にもっともっと大きな転機が待っていた。
〈後編に続く〉