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ラグビーPRESSBACK NUMBER
戦力外通告→所属チーム不祥事が発覚…天才ラグビー選手を襲った苦難の連続「幸太朗と順平のW杯はバイトしながら見た」「引退の連絡はしていない」
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/02 11:01
フレンチ・バーバリアンズ戦で突進する日本XVの竹中祥(2012年、当時筑波大2年)
あるときは、試合に向けたメンバーで練習することもあったが、週の半ばにケガで離れていた外国出身選手が戻ってきてポジションを奪われた。コーチには『試合に出してあげたいけど、出した試合でケガをしないか怖い』と言われた。
ラグビー自体の変化も逆に作用した。ラグビーは先発の15人ではなく、リザーブの8人を含めた23人で80分をどう戦うかを問われるスポーツになっていた。リザーブにはチームを加速させるインパクトプレーヤー役が求められ、しかし同時に負傷に備えたバックアップの役目も消えない。必然的に複数ポジションをこなせるマルチスキルの持ち主にリザーブのジャージーは与えられた。WTB専門の竹中に試合出場のチャンスは回ってこなかった。
「コーチの考えは分かります。でもなんか、小綺麗な選手ばかり集まって、色がないな、個性がないな……と思っちゃいましたね。コーチもみんな『NZのスタイルはこうだから』『南アフリカではこうしているから』というようなことばかり言って。結果、どこのチームも同じようなラグビーになってますよね」
結果的にラストシーズンになった2022年は「自分が試合に出られるかどうかよりも、その日の練習をいかに楽しむか、若い選手が成長できる空気を作るか、そっちを考えるようになっていました」という。
「自分が出るよりも後輩の出番が嬉しい」
竹中が目をかけていた選手がWTB小島昂だ。明大中野から明大を経て、竹中の1年後の2021年春に日野に加わった25歳。今季のリーグワンでは3部ながら8試合に出場、リーグ5位の5トライをあげている(4月1日現在)。
「僕も日野に来たとき、片岡将さん(現・釜石シーウェイブス)のような、プロ選手として生きてきた先輩選手にお世話になって、アフター練習につきあってもらったりしたし、それを後輩に返していきたかった。小島は明大ではあまり試合に出られなかったようだけど、懐が深くてストライドが大きくて、手足が長くてハンドオフも強い。高さもあってポテンシャルがすごいんです。
だけどラグビーって試合に出ないと成長できないスポーツですからね。外国人選手がケガで外れたときは正直、自分が出るよりも小島が呼ばれた方が嬉しかったです。今シーズンは試合に出ているし、彼が活躍しているのは嬉しいですね。あとは東郷太朗丸(たろま)。BKはどのポジションでもできるし、何をやらせても上手い。あんなに良い選手はD1にもなかなかいない。代表にも絡んで欲しい」