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ラグビーPRESSBACK NUMBER
戦力外通告→所属チーム不祥事が発覚…天才ラグビー選手を襲った苦難の連続「幸太朗と順平のW杯はバイトしながら見た」「引退の連絡はしていない」
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/02 11:01
フレンチ・バーバリアンズ戦で突進する日本XVの竹中祥(2012年、当時筑波大2年)
自身も現役続行の意思はあった。エージェントにもその希望は伝えた。だが、いくつかのチームに打診はしたが色よい返事はなかったと言われ、やがてその報告も途絶えた。
プロの契約選手、収入がなくなれば生活も続かない。どこかで区切りをつけなければならない。ラグビー日本代表がW杯フランス大会に向かって浦安合宿、ウォームアップマッチへと向かっていた2023年6月、竹中は現役生活に自らピリオドを打った。31歳の誕生日まで、あと2カ月と迫っていた。
「やりたいことも見えてきていました。現役の間、トレーナーの方々にすごくお世話になって、身体の構造を改めて知ったことで、アスレチックトレーナーになる勉強をしたいと思っていたんです」
そう思った矢先に、柔道整復師の資格を取れる、自宅から通える専門学校を見つけた。接骨院も開けるから、アスリート相手だけでなく、地域の高齢者や子どもに身体の使い方、ケアの仕方を伝えることもできるだろう。自分自身のスキルアップにもなるし、これからの世の中に必要な仕事だ、やりがいがあると思った。
小倉もW杯メンバーに選ばれた
一方で、生活していかなければならない。5月末で日野との契約が満了すると、6月から居酒屋で、7月からは並行してスポーツジムでのアルバイトを始めた。働き手不足の時代、仕事を始めたら始めたで忙しい日々がやってきた。桐蔭学園の同級生である松島に続いて、小倉もW杯大会の日本代表に選ばれたというニュースを聞いたのはそんな頃だった。
「こっちから(引退したことを)伝えたりとか、おめでとうとかの連絡はしませんでした。集中しているだろうし、ガンバレ~! と思うだけ。W杯も、(小倉)順平と(松島)幸太朗が組むんだったら現地に応援に行きたかったくらい。行けなくても、仕事は休みをもらってテレビを真剣に見て応援しようと思ったけど……順平はなかなか試合に出るチャンスがなくて、せっかく選ばれたのに寂しかったですね。幸太朗を一番うまく活かせるのは順平だと思う。僕にとってもそうだったし。結局、日本代表の試合はバイトしながらスコアを見ていました」
自分がそこにいられたら、という思いは頭を過ぎらなかったのだろうか? その問いに竹中は笑って首を振った。
「2019年のときから、一緒にやっていた選手がたくさん出ていて嬉しいなと思って応援していましたから。(松島)幸太朗も(福岡)堅樹も大活躍したし、リーチ(マイケル)さんとか少し上の世代もいた。僕は代表に1回入れただけで十分すぎるくらいの経験ができたし、もう代表を目指す思いはなかったです。そもそも、ジェイミー(ジョセフ)の目指すあのラグビーだったら、自分がベストの状態だったとしても呼ばれる可能性はないよね、と自分で悟っちゃってた(笑)」