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戦力外通告→所属チーム不祥事が発覚…天才ラグビー選手を襲った苦難の連続「幸太朗と順平のW杯はバイトしながら見た」「引退の連絡はしていない」
posted2024/04/02 11:01
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
JIJI PRESS
2020年1月に始まったトップリーグはコロナ禍によりシーズン途中で打ち切られ、そのシーズン終了後、竹中祥はNECから戦力外通告を受けた。
実は、シーズン開幕前、大学1年から患っていた右足首の切開手術に踏み切っていた。長年にわたって苦しめられていた足首の違和感が消え、これならパフォーマンスも上がると思い、懸命にリハビリに励んでいた矢先の出来事だった。
NECからは一般社員として会社に残る選択肢も提示された。だが、竹中にはもう少し、ラグビーで挑戦を続けたい思いが残っていた。W杯で大活躍した松島幸太朗はコロナ禍の中、フランスリーグのクレルモンへ移籍し、新たなフィールドでのチャレンジを始めた。小倉順平は所属していたNTTコミュニケーションズを離れ、そのシーズンで活動終了が決まっていたサンウルブズに身を投じた。
保証のないところへ挑戦する同級生たちの姿から刺激を受けないはずがない。しかし、竹中の職場はそう簡単には見つからなかった。コロナ禍でどこのチームも活動を停止。トライアウトを受けようにもどこのチームも練習していない。海外のチームで再出発を目指そうにも、どこの国も国境を封鎖していた。
そんな時、手をさしのべたのは小倉だった。小倉のエージェントがいくつかのチームに話を持ちかけた結果、トップリーグの日野レッドドルフィンズが竹中に興味を示してくれた。竹中は競技生活を続けることになった。
不祥事発覚で空中分解「何もできなかった」
だが、そこでも竹中の輝きが戻ることはなかった。
1年目はリハビリに専念した。リーグワンに再編された2年目はコロナ禍の中、開幕のスカイアクティブズ広島戦に先発し、以後も2試合に途中出場したが、トライはあげられずにシーズンを終えた。
そして迎えた3年目は、シーズン半ばの2月に、シーズン前の別府合宿での不祥事が発覚。すると会社は早々にチームの活動停止を決定した。
竹中ら契約選手は事態の正確な検証を求め、反省の姿勢を示すためにもチーム活動の継続を主張したが母体企業にその声が届くことはなかった。何もできないまま、シーズンは強制終了。そしてシーズン終了後、再契約はしない旨が伝えられた。それは竹中にだけではなく、契約の切れるプロ選手全員に対する措置だった。
「何もできなかったですね。ただ、悔しいという気持ちもそんなに湧かなかった。自分の状態は良くなっている感触があったんです。ケガもようやく癒えて、体組成の数値も良くなっていた。体力的にもNEC時代よりも上がって、成長している自信はあった。ただ、それを発揮する場所がなかった」