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北朝鮮戦5日前の通告「サウジに渡航せよ」なでしこ広報が語る“五輪切符舞台ウラ”熊谷紗希は2万キロ移動、清水梨紗「朝起きてどっと疲れが…」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byJFA/AFLO
posted2024/03/07 17:02
パリ五輪の出場権を大きく手繰り寄せる追加点を奪った藤野あおば(20歳)。歓喜のウラには多くの懸命なサポートがあった
2月8日、日本サッカー協会(JFA)は第1戦の開催地が中立地に変更される見込みであることを説明した。佐々木則夫JFA女子委員長のによる説明が終わった後、補足情報を求める記者に囲まれている時は、活動開始となる2月13日にはまとまるだろう、と見立てていた。広報もこの場に立ち会ったが、まさかこの時、そこから約2週間にわたり“開催地決定”を待つことになろうとは思わなかった。
行き先が決まらぬまま、なでしこジャパンの活動はスタートした。まずはWEリーグでプレーする選手を中心とした国内トレーニングキャンプから。日々メディア対応を行う選手が問われるのは常に「開催地が決まっていないが、どう準備するか?」の質問である。
他でもない、誰よりも早く結論を出してほしいと願っていたのは選手だった。開催地が変われば気候もピッチ状況も変わり、また移動のスケジュールが決まればそこから逆算したコンディショニングが必要となる。表面には出さずとも、オリンピック出場をかけた重要な一戦を前に気を揉まないわけがない。それでも選手たちは「相手は変わらない、いまできることに集中するだけ」と、気丈に振る舞っていた。
旅行会社と議論「海外組の渡航はどうする?」
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中立地開催の方針が発表されて以降、JFAは関係各所へのヒアリングや情報収集を行い、確定情報が出次第即座に動けるよう準備を続けていた。その間、耳にしたいくつかの候補地で開催された場合にどのようなスケジュールを組むか、日々(正確には数時間ごとに)アップデートされる情報を元にチームマネージャーと旅行会社のスタッフが頭を捻っていた。
特に悩まされたのはチームに途中合流する欧州クラブ所属選手の渡航スケジュールだ。今やチームの半数を占める海外組を、一度日本で合流してから開催地へ向かわせるべきか、はたまた移動負担を減らすために現地へ直行させるべきなのか。
中には、チーム本体が開催地に入る前に欧州組を現地入りさせ、先んじてコンディション調整をするプランもあった。そのために数名のスタッフが現地へ先乗りする計画を立てていたが、それを実行するに足る確証を得られず……結果的に日本に残っていた当該スタッフは、周囲から「もう出発したんじゃなかったの?」といじられる一幕もあった。様々なプランが作られては立ち消え、いたずらに時間は過ぎていった。