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甲子園の風BACK NUMBER
和歌山の無名公立校がなぜセンバツに?「強豪つぎつぎ撃破」「上下関係ゆるく髪型自由」“ロマンしかない”耐久高を訪ねた「エースの名は冷水孝輔」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byYuji Yanagawa
posted2024/01/27 06:01
初の甲子園出場を決めた和歌山・耐久高を訪ねた
「強さは本物」40年ぶり近畿大会でも…
秋季近畿大会は翌々週末に大阪シティ信用金庫スタジアムで開幕し、3週にわたってセンバツ切符は争われる。ところが、和歌山1位の耐久は第1週に試合がなく、第2週に連戦を強いられる組み合わせとなった。
再び井原監督が振り返る。
「この空いた時間の使い方には神経を使いました。もう一度、練習で身体を追い込み、試合のなかった第1週には、舞洲まで選手を引きつれて行って、球場の雰囲気や舞洲に吹き荒れる風の確認もできた。そして試合当日は、早朝に学校に集まって、バッティング練習をしてから会場に乗り込んだ。大阪とはいえ、学校から1時間ほどで到着するんです。大阪のホテルには泊まらず、一度、和歌山に戻って、また翌日、同じことを繰り返した。和歌山大会からのルーティンを崩さなかったことが好結果につながったような気がします」
初戦の社(兵庫)戦では7回までに2対3とリードされていた。だが、8回表に1死満塁から4番岡川翔建(センター)の走者一掃の二塁打が飛び出し、試合をひっくり返した。
岡川にとっては会心の一打だった。
「耐久はいっぱい打つチームではないので、チャンスが少ない。だからこそ、チャンスで打席に立った時が大事になる。あの二塁打は最高に気持ち良かったです。でも、甲子園で打てたらもっと気持ち良いんじゃないかと思っています」
グラウンド共有、ゆるい上下関係…髪型は?
耐久には19人の選手しかいない。グラウンドも軟式野球部やサッカー部などと共有だ。だが、デメリットばかりではない。大所帯のチームと同じ時間を練習するとして、少人数の方が密度が濃くなるのは当然であり、他の部が練習をしていない早朝などに耐久のナインは集まって自主練習も行ってきた。
また、ひとりでも人数が欠けたら大きな戦力ダウンとなるため、伝統校にいまだ残る上下関係もゆるく、練習を眺めていても仲の良さが伝わってくる。