- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
和歌山の無名公立校がなぜセンバツに?「強豪つぎつぎ撃破」「上下関係ゆるく髪型自由」“ロマンしかない”耐久高を訪ねた「エースの名は冷水孝輔」
posted2024/01/27 06:01
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph by
Yuji Yanagawa
学校創立は江戸時代――今春のセンバツ甲子園への出場が決まった「超伝統校」耐久高校。智弁和歌山や市立和歌山といった強豪ひしめく和歌山で、なぜ“快進撃”を遂げられたのか。現地を訪ねた。(全2回の2回目)
◆◆◆
和歌山県立耐久高校がある和歌山県有田郡湯浅町は、日本の醤油発祥の地である。そんな予備知識とともにJR湯浅駅を降り、学校まで8分の距離を歩くと、どことなく醤油の香りが漂ってくるように感じるから不思議だ。事実、耐久高校のグラウンドの左中間の後方には、醤油会社の醸造場も見える。
この日、耐久高校のグラウンドには白い雪が舞っていた。気温が0度に迫るなか、「耐久」の名を背負う硬式野球部の19人の選手は、寒さに耐えて早朝から汗を流していた。
「毎年、人数集めには苦労していまして…」
自身も同校のOBであり、指揮官となって5年目となる井原正善監督(39歳)が話す。
「毎年、人数集めには苦労していまして、卒業を控える3年生は6人でした。新3年生となる今の代は、前チームから試合に出ていた選手が7人いて、ポジションもバッテリーやショート、センターと守りの要となるところばかり。ですから、新チームがスタートした時に、秋季大会ベスト4を目標に掲げていたんです。ところが初の公式戦となる新人戦は、準々決勝で日高高校に負けてしまった。もう一度、気持ちを引き締めて臨んだ秋の県大会準々決勝で、再び日高高校と対戦し、リベンジを果たせた。そこで勢いに乗ったと思います」
これまでも県大会のベスト4まで勝ち進んだことはある。3年前には、県ベスト8ながら和歌山県の21世紀枠推薦校になったこともある。指揮官の心中に、だんだんと甲子園に近づいている実感はあった。だが、必ず智弁和歌山や市立和歌山、和歌山東に甲子園の道は阻まれてきた。