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「注目されてつらい思いを…でも」ドルーリー朱瑛里をめぐる過熱報道に思うこと…異様な雰囲気だった全国女子駅伝、記者発表の舞台ウラ
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/18 17:06
全国女子駅伝のレース後に取材に応じたドルーリー朱瑛里(岡山県代表/津山高校)
「質疑応答は確実に共有されるのか」
「代表質問をする社以外も別室に入れてもらえるのか」
「カメラは中に入れないのか」
「テレビとペンの取材はきちんと分けられているのか」
主催者は穏やかに一つずつ丁寧に応じていたが、一人の選手に固執する一部メディアの姿は異様に見えた。記者発表の終了後、主催者はその件について話し合いを行い、全社から事前に質問を受け付ける、と発表した。質問送付の締め切りは30時間後になっていた。
質問が殺到するのではないか、という主催者の心配、不安は杞憂に終わった。質問を送った社はテレビとペン(新聞、雑誌)合わせて本当にわずかで、ペンに関していうと陸上専門誌1社、岡山の地元紙、弊誌、そして共催社の4社のみだった。
記者発表で質疑応答での異様な熱意、一方でそれに相反する質問の少なさに主催者と共催社が拍子抜けしたのは想像に難くない。
取材する側の権利と義務
我々には取材する権利がある、と言わんばかりに権利を主張する一方で、質問がないというのは矛盾しているように感じられた。もちろんスポーツ現場の取材時には、時間制限などで質問ができなかったり、他の記者と質問が被ってしまうケースも多々ある。質問したくてもできない場合ももちろんある。
しかし今回に限って言えば、質問送付まで1日以上あり、送った質問はすべて代表者が質問してくれる状況だった。
「取材したいが質問はない」
「質問はないが取材はしたい」
「誰かが聞いた質問で記事を書く」
「自分が聞きたいことを誰かが聞いてくれるはず」
そもそも取材は対象者に聞きたいことがあって成立するものだと思う。この件の一番の被害者は「特に聞きたいこともないけれど、とりあえず取材したい(写真だけ撮りたい)記者たち」に囲まれて取材を受けなければならない選手本人だ。
主催者がそういったメディアを排除すればいい、記者対応をしなければいい、という意見も出るかもしれないが、主催者が対応できない場所で選手を追いかける可能性もあり、なかなか難しい問題だ。
つらかった気持ちを吐露したドルーリー選手
報道陣を前にしたドルーリー選手は拳をぎゅっと握り締め、緊張した面持ちで一問ずつ丁寧に応じた。ここ1年の過熱報道に対しても言葉を濁さず、はっきりと意見を口にした。