「広岡達朗」という仮面――1978年のスワローズBACK NUMBER
「王貞治より稼げるぞ」ヤクルトの“打てる捕手”八重樫幸雄はなぜ名将に愛された?「入院中に森さんが…」“広岡達朗の名参謀”の無茶振り秘話も
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byKYODO
posted2024/01/19 11:02
現役時代の八重樫幸雄。王貞治に一本足打法を授けた荒川博から「アイツなら5000万は稼げる」とバッティングセンスを高く評価された
「いや、それは僕にはわからないけれど、僕は高校時代からずっとこのスタイルだったし、引退するまでそれは変わらなかった。もちろん、そのことについて森さんからは何も言われたことはありませんでした」
その理由について、大矢も八重樫も意見は一致している。
「監督にしても、コーチにしても、新たにチームに加わったときには、既存のレギュラー選手ではなく、自分で育てた選手を起用したくなるものですけど、きっとこのときの森さんもそうだったんじゃないのかな……」
真相は不明だが、八重樫に対する期待の大きさがよく伝わってくる。指揮官である広岡は「大矢は投手陣の支えにならなければならない。大矢の頭脳によって、投手たちの力が、十にも五にもなる可能性があるのだ」と語っている。そこには、正捕手・大矢を発奮させ、八重樫との相乗効果を狙う意図があったのか? もしも、アクシデントに見舞われていなければ、そのまま八重樫がマスクを被り続けていたのだろうか?
<八重樫幸雄編第3回/連載第19回に続く>