ボクシングPRESSBACK NUMBER

井上尚弥のワンツーは「硬い塊をぶつけられる感覚」“怪物と最も拳を交えた男”黒田雅之が見た「(ガードの上からでも…)あれは効いている」 

text by

森合正範

森合正範Masanori Moriai

PROFILE

photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2023/12/31 11:06

井上尚弥のワンツーは「硬い塊をぶつけられる感覚」“怪物と最も拳を交えた男”黒田雅之が見た「(ガードの上からでも…)あれは効いている」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

タパレスを10回KOで撃破した井上尚弥の凄さを、黒田雅之が解説

KOした“ワンツー”は何がスゴいのか?

《主導権は井上が握ったままだったが、タパレスの一発にも力があり、中盤以降はヒリヒリした展開が続いた。判定までいくのかと思われた10回、突如フィニッシュが訪れる。井上が大きな右を放ち、その後ワンツー。タパレスが崩れ落ち、そのまま立てず、テンカウントを聞いた。〉

――最後のKOシーンはどう見ましたか。

「僕も最初はダメージの蓄積かなと思いました。タパレスも最善を尽くしてきて、ピリッとした緊張感の中だったのに、言葉にするとすごく安っぽいし、誤解があるかもしれないけど、最後はなんの変哲もないワンツーじゃないですか」

――はい、確かにそう見えました。

「『なんの変哲もない』ほど自然に見えてしまうからこそ当たる、効くパンチなのかなと思いました。4回のサイドステップの件と重なりますが、シャドー、ミット、サンドバッグで気が遠くなるくらいやりこんでいる。だから、ごく自然に見えるんですよね」

「何か硬い塊を思い切りぶつけられているような感覚」

――力みのないパンチ。体に染みついた動きということですね。

「でもね、あの距離からの井上選手のワンツーって、本当に何か硬い塊を思い切りぶつけられているような感覚なんですよ。それがテンプルのあたりに入ったら、それは脳が揺れて、ああなっちゃう。思い切り踏み込んで体重も乗っていましたしね」

――井上選手も会場も、最初は「えっ!?」という感じでしたね。

「すごいものを見たという衝撃というより、幕切れがワンツー。『えっ……』という衝撃ですよね。左ジャブでガードを割って入ってからの右。見ているこっちも言葉が出ないというか」

――井上選手はフィニッシュのワンツーの直前にガードの上からとはいえ、大きな右を打っていますね。

「さすがにあれは効いていると思います。切れがあるパンチなら大丈夫なんですよ。でも、あれは重いパンチですよね。人間の拳の感覚ではないもの、硬くて重い何かが飛んでくるので。僕はバンタム級までで、スーパーバンタム級の井上選手を経験していないので、もう考えの及ばないところまで来ているかもしれないです」

【次ページ】 「慢心とか油断とかには一生縁がないんじゃないかな」

BACK 1 2 3 NEXT
#井上尚弥
#黒田雅之
#マーロン・タパレス
#スティーブン・フルトン

ボクシングの前後の記事

ページトップ