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「このままではスキージャンプができなくなる」高梨沙羅27歳が語る“危機感”…天然雪が減っている「人工雪は足に響く」ケガのリスクも
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/12/19 11:05
今年10月に27歳になったスキージャンプ高梨沙羅。今回のインタビューではNumberのカメラマンが特別フォトを撮影した
今年6月、高梨は雪山の自然環境を守るためのプロジェクト「JUMP for The Earth PROJECT」を立ち上げ、女子ワールドカップの開催地でもある蔵王で約100組の親子とともにゴミ拾い活動を行った。10月にその第2弾として、札幌市にある藤女子高等学校の生徒とともに「スポーツイベントでできる、環境問題解決のためのアクション」をテーマにしたワークショップを開催。藤女子高を訪れた高梨はパネリストとして、自らの経験や考えを伝えるとともに、高校生たちの活動も聞きながら意見交換を行ったのである。
元々、藤女子高は全国17校、約2000人の女子高生が参加する環境問題解決プロジェクト「Blue Earth Project」に参加していて、それが今回の高梨とのコラボレーションにもつながった。
毎年1月には藤女子高からも近い札幌の大倉山ジャンプ競技場でW杯が開催されており、選手、観客、主催者、それぞれの立場でできることにはどんなことがあるのか。高校生たちが事前に考えてきたアイデアを聞きながら議論を深めていった。そのやりとりは高梨にとっても大いに刺激になったようだ。
「いいアイデアがたくさん出てきたので、それを実現できるようにしていきたいなと思いました。タンブラー持参だったり、ウェアや応援グッズのレンタルだったり……」
「ジャンプってメジャーな競技ではないので…」
高梨が一番気に入ったのは小豆を布袋に入れてカイロとして使うアイデアだったという。
「すごくいいアイデアで、繰り返し利用できるものなんですけど、その度にレンジでチンしないといけないんです。それに15分しか持たないというので冬のW杯会場では難しいかなと。でも、いらなくなった小豆をカイロにするって、なんだかあったかいですよね。そのアイデアだけでもうすでにあったかいなって思いました(笑)」
小さなことから、いずれ大きなことに繋げていければいい。というのが、高梨の考えだ。
「ゆくゆくは大会運営を太陽光パネルからの電力で賄って、駅からジャンプ台までのギャラリーバスをバイオ燃料で動かす。そういうところまでいけたらいいなと思います」
高梨は参加した生徒たちに「ジャンプ台に行きたくなるにはどうしたらいいですか?」という質問も投げかけた。女子ジャンプの第一人者としてファン層拡大は常に大きな課題。若い世代の本音を知るには、またとない機会でもあったからだ。高校生からは「夜景が綺麗なので夜に行ってみたい」「札幌市の中心で競技が行われたら」という意見が出され、高梨は真剣に耳を傾けた。
「ジャンプってメジャーな競技ではないので、どうしたら一般の人にも興味を持って見てもらえるかをいつも考えています。みんなの話を聞いて、最初のとっかかりとして、小さなジャンプ台を街中に作ったり、そういうところから普及活動をしていかないといけないんだと思いました」
「氷上での練習ができなくなった」
高梨と同じ冬季五輪のメダリストでは、ノルディックスキー複合の渡部暁斗も環境問題への独自の取り組みが話題になった。