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「このままではスキージャンプができなくなる」高梨沙羅27歳が語る“危機感”…天然雪が減っている「人工雪は足に響く」ケガのリスクも
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/12/19 11:05
今年10月に27歳になったスキージャンプ高梨沙羅。今回のインタビューではNumberのカメラマンが特別フォトを撮影した
昨季、二酸化炭素排出量を実質ゼロにして競技活動を行うためのエコパートナーを募集し、環境負荷を抑えた天然由来の素材を使ったシューズメーカー「Allbirds」と契約。同社によるヘッドギアへの広告掲載料を、長野県木曽町の森林整備に充てられるクレジット70トン分の購入費とし、今季もそのパートナーシップを継続している。
渡部は今オフのオーストリア合宿でキャリアで初めて氷上での練習ができなくなり、地元の白馬でも積雪量が大幅に減っているのを実感したという。そこで「真剣に課題に取り組んでいかないと五輪以前にスキー競技ができなくなるだろうと思っている」と高梨と同様に危機感を強めている。
ただ、ストイックで鉄の意志を持つ渡部のようなアスリートであっても、普通の人と変わらないこんな気持ちがあったという。
「環境問題はすごく規模が大きい分、何から取り組んでいいかわからない。実際のところ自分の行動が地球に対してどれだけ影響があるのか。それを考えると無力感もありました」
だから渡部も一気に大きな変化を、とは考えなかったようだ。
「自分が感じている気持ちをいろんな人に伝えていく。他人事じゃなくて自分事として考える。まずはみんなが自分事化していくことが大事だと思います」
高梨も新しいシーズンに向き合いながら同じように考えている。
「たくさんの人を巻き込むことが大事。いろいろな方からそう教えてもらって、だからこそこういうプロジェクトを立ち上げたんです。しっかり地球環境のことを知ることに始まって、現状の課題を知って、どう行動するかをたくさんの人と考える。それで輪が大きくなっていくんだと思います」
1月14日の女子ジャンプのW杯会場では、高梨と藤女子高の生徒たちでブースを出す予定。高梨は試合優先となるが、高校生たちが来場者が持参したマイボトルへのドリンク提供やボトルの販売などを行う準備を進めている。
<前編から続く>