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「ヤバい、俺死んじゃうかも」5年生存率50%以下の闘病生活を乗り越えたプロスノーボーダー・荒井daze善正の再生物語「俺がもし生き残ったら…」
posted2024/01/26 11:01
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Hideki Sugiyama
病魔に襲われてから、骨髄移植、闘病、復帰、恋人との結婚にいたるまでをDAZE本人が赤裸々に明かした。(全2回の前編/後編へ)
自分の体に深刻なことが…
「おまえ、帰れ。あれで立てないんじゃおかしいわ。ちゃんと治してこい」
「あ、はい……」
先輩からそう言われ、力なくうなずくことしかできなかった。
プロスノーボーダーの荒井daze善正は北海道でのイベントに参加していた。キッカーから思い通りの軌道を描いて飛び出し、イメージ通りに回転して雪面にビタッと着地した……はずなのに、なぜか転んでしまう。普通ならありえない失敗だった。
自分の体に何か深刻なことが起きている。
プロスノーボーダーとしての根幹である滑りが狂い始め、第三者である先輩からも冷静な指摘を受けたことで、DAZEはその事実と改めて向き合わなければいけないと思った。
最初は、なんとなく具合が悪いなというレベルだった。スープカレーを食べると体調が悪くなったり、熱が続いて扁桃腺がひどく腫れたりした。それがいつまで経っても治らない。
知り合いが勤める北海道の大きな病院で検査を受けると、急性の感染症である伝染性単核球症だろうと診断された。2、3週間で治るだろうとも。実際にしばらくすると症状はおさまっていったものの、それは一時的なものでしかなかった。
「だんだん手が震え出したり、足が痺れるようにもなりました。でも、その頃の自分はプロとして駆け出しの時期だったんです。だから頑張らなきゃいけないと思って滑り続けていた。そうしたら自宅で気を失いました」
痙攣して泡を吹いていたという荒井は、すぐに病院に運ばれ、3カ月以上入院することになった。大がかりな検査をしたが、いくら調べても原因がわからなかったからだ。結局、診断は出ないまま、別の病院に移って2週に1回の通院で経過観察となった。
「だからもう行っちゃえって北海道のイベントに滑りに行ったんです」
だが明らかにおかしいDAZEの滑りを見て、ドクターストップではなく、先輩からスノーボーダーとしてストップをかけられたのだった。
慢性活動性EBウイルス感染症という診断結果
治せと言われても果たしてどうすればいいのか。DAZEは途方に暮れた。