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「パリ五輪ではすべてを懸けてメダルを獲りたい」ケイリン日本代表・男子の“怪物”太田海也と女子の“エース”佐藤水菜の決意 

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石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/12/21 10:30

「パリ五輪ではすべてを懸けてメダルを獲りたい」ケイリン日本代表・男子の“怪物”太田海也と女子の“エース”佐藤水菜の決意<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

ケイリン日本代表の太田海也(右)と佐藤水菜

驚異的な成長を続ける男はメダル獲得のみを目指す

「競技」と「競輪」の両方で活躍が期待されるニュースター・太田海也もまた大舞台を目標に見据え、自転車と向き合ってきた。

 本格的に競技を始めてから2年足らずだが、驚異的なスピードで成長する怪物は、世界でも注目のスプリンターに数えられる。

 高校まではボート競技に励み、インターハイでは優勝経験もある異色の経歴を持つ太田は、2021年に日本競輪選手養成所に入所。中野慎詞とともに121期を早期卒業し、めきめきと頭角を現した。

「ボートでオリンピックに出るのが目標でした。でも世界との差が大きいことも痛感していて。その原因が身長の低さだと言い訳し出した自分自身もすごく嫌で。自転車は昔から好きで、根拠はないのですがなぜか人よりも自転車を速く漕ぐことに自信を持っていたんです」

 2022年1月にプロデビューすると、同時にナショナルチーム入りも果たした。

「同期では一番強いという自信もありましたが、実際にレースに出たり、代表のトレーニングに参加すると周りは想像以上に速く、強い選手ばかりで。1年間ぐらいは絶望の連続でした。とにかく勝てずスピードも出ない。自分が持っている力を信じてはいたけれど、何かを変えないといけない、と試行錯誤する日々を過ごしていました」

 デビュー後、A級時代にレースで負けが続いたとき、「両立させるのは難しいのかな」と本気で悩んだこともあったという。カーボン製の自転車を使うケイリンに対し、鉄製を使う競輪。バンクの形状やルールも違う2つの両立は簡単なことではなかった。

「競輪がケイリンに、ケイリンが競輪に生かされる」

「パワーの伝え方が違うんです。カーボンの自転車は多少粗い感じでもドーンと進んでくれるけれど、鉄製は針の穴に糸を通すように繊細にペダルを踏まないと進まない。ケイリンと競輪を行き来すると感覚をアジャストするのが最初は難しかった。ただ、まったく別のことをしているわけではない。それに競技ではパワーが、競輪では細かなテクニックが磨かれていく。競輪がケイリンに、ケイリンが競輪に生かされることもあって、今は両立しているからこそ手に入れられるものがあると感じています」

 2023年2月のネーションズカップ第1戦ではスプリントで自身初の銀メダルを獲得。7本を9秒台で走りフィジカルの強さを見せつけた。第2戦でもケイリン、スプリント、チームスプリントの3種目で銅メダルを獲得。内容も驚異的だった。

 第1戦のスプリントでは準々決勝でオランダの実力者ジェフリー・ホーフランドと対戦し、2本先取して勝利。第2戦では4年間スプリントの世界王者に君臨するハリー・ラブレイセン(オランダ)から準決勝で1本勝利をつかみ取った。日本人選手が辛酸を舐めてきた別次元の力を持つ東京五輪のメダリスト2人を前にしても、怯まなかった。

「本気で勝ちたいし、勝てると思っています。決して遠い存在ではない。2人にも弱点はあるし、それをどうやって攻略していくかを考えることが楽しいですね」

「いい勉強をさせてもらった」ジェイソンコーチとの時間

 8月の世界選手権ではメダルに届かなかったが、アジア競技大会で二冠を達成するなど、2023年は評価に値する成績を残してきた。

 驚異的な成長の裏には、ジェイソン・ニブレットヘッドコーチの存在がある。太田は自転車経験が浅いゆえにまだ粗削りなところも多い。2022年末、それを補うべくジェイソンコーチと共にトレーニングに励んだ。

「1カ月間ぐらい、週に1回1時間程度、ジェイソン自ら自転車に乗って指導してくれ、戦術や戦略、判断力の部分まで細かく叩きこまれました。そこで感じたのはパワーがなくてもテクニックだけでもある程度のレースができるということ。それが自信に繋がったし、レースでもそのトレーニングの成果が出た。本当に濃密な時間だったし、いい勉強をさせてもらいました」

 25歳で迎える大舞台は「メダルを獲ること以外は考えていない」と言い切る。

 スポンジのような吸収力が、さらなる進化を促す。自分自身の成長が、今、何よりも大きな原動力となっている。

 佐藤、太田ら短距離陣は、東京五輪後に力を伸ばしてきた選手がパリ五輪の中心だ。

 彼らに来夏どんな景色が待っているのか。2人は全開でペダルを踏み続ける。

https://www.jka-cycle.jp/about

競輪とオートレースの売上の一部は、機械工業の振興や社会福祉等に役立てられています。

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