プロ野球PRESSBACK NUMBER
《岡田采配はなぜ当たる?》阪神・岡田彰布監督が「無死一、二塁のゲッツーはOK」と語る“納得のワケ”「2死三塁なら次の打者は…」
text by
掛布雅之Masayuki Kakefu
photograph byNanae Suzuki
posted2023/11/04 11:02
阪神・岡田彰布監督が「無死一、二塁のゲッツーはOK」と語る理由は…?
「後ろの打者にとって打ちやすい環境をつくる」という、次の打者の心境にまで考えを及ぼすのが「岡田イズム」なのだ。その好循環が、いい結果につながっているのだろう。
岡田監督の「ゲッツーOK」という考えは、彼が阪神の二軍打撃コーチだったときからあったものだ。
ある日の二軍の試合で、無死一塁の場面がきた。北川博敏がバッターボックスに向かうと、ベンチがざわついたという。その理由を岡田が聞くと、「北川は、きっとゲッツー取られますよ」と返ってきた。案の定、北川はゲッツーに倒れた。
ADVERTISEMENT
北川は好機でのゲッツーを怖がって当てにいくから、ショートゴロになって、ゲッツーを取られていたのだ。そこで岡田は次の試合、同じ状況で北川の打席が回ってきたときに、あえて「ゲッツー打ってこい!」と言って送り出した。
ベンチはみんな黙ってしまったが、結果は三遊間を抜けるヒット。ゲッツーを恐れずに、きっちりバットを振り切ったから、打球が強くなり、野手の間を抜けていったのだ。
岡田の「ゲッツー打ってこい!」という発言には、失敗を恐れずに思い切っていけという親心にも似た気持ちがあったのではないだろうか。
選手の能力や適性を見抜くのが監督の仕事
「監督の大事な仕事のひとつは、選手の能力や適性を見極めることだ」と岡田監督は語っている。
その例として、前述したJFKの藤川球児について言及した。
岡田が阪神で二軍監督をしていたころ、ドラフト1位で入団してきたばかりの藤川と出会った。藤川は球質は軽いけれどホップする。これはいい投手に巡り合えたと思ったという。
高卒で入団してくるルーキーで最初から即戦力として一軍で活躍できる選手は少ない。藤川も3年間は二軍で鍛えて、4年目に一軍で投げさせようと岡田は考えていた。
二軍では先発投手として起用し、多くのイニングを投げさせて育成していくのが基本である。当然、藤川の場合も先発で投げさせたが、5回くらいまで投げると、ガタッと球速が落ちる。