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日本ハムからまさかの“強行指名”に「すぐに答えは出なかった」指名拒否でJR東日本に入社、履正社左腕が明かす決断の真相「プロは憧れの場所。でも…」

posted2023/11/04 11:03

 
日本ハムからまさかの“強行指名”に「すぐに答えは出なかった」指名拒否でJR東日本に入社、履正社左腕が明かす決断の真相「プロは憧れの場所。でも…」<Number Web> photograph by KYODO

日本ハムにドラフト6位で指名され、球団側からの説明を聞く履正社時代の山口さん。本人の心中には「ある思い」があった

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内田勝治

内田勝治Katsuharu Uchida

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 今年も様々な感情が交錯したプロ野球ドラフト会議が終わった。指名を受け、快哉を叫ぶ選手、破顔一笑で喜びをかみしめる選手、感極まり涙する選手、そして最後まで名前を呼ばれず、唇を真一文字に結び、再起を誓う選手…。多くの人間ドラマがそこに凝縮されていた。

 今から7年前の2016年ドラフト。自分の名前が呼ばれても、素直に感情を表現できない選手がいた。なぜか。その選手は、3位以内でなければ、社会人野球チーム入りを公言していたからだ。山口裕次郎さんが指名の一報を耳にしたのは、高校から帰路に就く直前だった。(Number Webノンフィクション 全2回の第1回/続きは#2へ)

「6位でかかったぞ」「まさか…」

「ドラフトは学校の校長室で見ていました。3位まで見て、その次の4位まで見ていましたけど、そこまで指名がなかったので、もう帰る準備をしていた時に、監督さんから『6位でかかったぞ』と伝えられました。まさかって感じでしたね」

 15歳の春。「甲子園出場とプロ野球」という2つの夢を叶えるべく、大阪のヤングリーグ・寝屋川ベースボールフレンズから履正社高校の門を叩いた。履正社は入学する直前の2014年センバツで準優勝を果たすなど、大阪のみならず、全国でも知られた強豪。新入生もボーイズリーグやシニアリーグなどで代表クラスもいる精鋭揃いだった。その中で、一際大きな体の選手がいた。のちに山口さんと左腕2本柱を形成する寺島成輝さん(元ヤクルト)だった。

「(寺島)成輝は体も身長も僕より大きくて、凄い左ピッチャーがいるなと思って見ていました。とにかく全員に驚きました。守備にしてもバッティングにしても“うまっ!”ていうか、僕のやってきた中学では見たことがないレベルでした。自分のレベルアップにもなりますし、ワクワクしましたね」

3年春頃には、プロ入りも意識

 1年夏の大阪大会からベンチ入りし、登板を重ねる寺島さんにライバル心をあらわにした。「成輝は初めて負けたくないって思った存在。自分も年月が過ぎていくうちに、体も大きくなって力もついてきた。最後は自分がエースナンバーを獲るという気持ちで見ていました」。自身も寺島さんに負けじと、1年秋からベンチ入り。直球の最速は135キロから、3年時には146キロまで成長した。

【次ページ】 プロに行きたい気持ちはありましたけど…

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