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“真の文武両道”を目指す名門公立校「余力を残しての勉強は意味がない」「中学生はサッカー以外の経験も…」内田篤人らの母校の試みとは
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2023/09/07 11:04
中学生のサッカー練習メニューを考える清水東高校の生徒
ジュニアユースの選手たちが練習前に勉強するのに対し、清水東サッカー部の選手は練習後に勉強している。中には、グラウンドの向かいにある学習スペース「寺子屋」で、直前まで学習していた中学生と入れ替わり、自習してから帰宅する生徒もいる。
田村さんも毎日、2~3時間は勉強時間を確保しているという。
文武両道の伝統については「まずは、サッカーを頑張る意識を持っています。サッカーで調子が上がらないと勉強のモチベーションが上がりませんし、サッカーで余力を残して勉強するのは意味がありません。どちらも本気でやらないと、どちらも結果を出せないと思っています」と語る。そして、こう続ける。
「ジュニアユースができてから、常に後輩から見られているという責任感が強くなりました。サッカーだけではなく、勉強でも私生活でも決して恥ずかしい姿は見せられません。部活も勉強も思い通りに行くことばかりではありませんが、苦労や挫折を乗り越えた経験が社会に出た時に生きると考えています」
中学生はサッカー以外の経験を積んだ方が将来に生きる
公立高校の清水東は、練習場の設備や寮が充実した私立の強豪校に環境面では太刀打ちできない。私立では全面人工芝が珍しくない中、今でも土のグラウンドで練習している。それでも、選手たちは環境を言い訳にしない。
田村さんは「土のグラウンドにも良い面があります。土の上でボールを思い通りに操れれば、人工芝で質の高いプレーができます。試合は、いつもピッチのコンディションが良いとも限りません」と前向きに捉える。社会に出ても、必ずしも恵まれた環境で仕事ができるとは限らない。与えられた条件で最大限の結果を残せるかどうかが求められる。高校生活での部活動は社会に出る準備となっている。
ジュニアユースは昨年設立したばかりだが、地元企業の職場見学や高校生との合同合宿も実施している。こうした活動を継続していきたいと考えている。清水東OBで高校サッカー部の大川晃広総監督も「中学生の年代はサッカー以外の経験を積んだ方が将来に生きると思っています。ジュニアユースは中学生が高校生を身近に感じる機会になりますし、高校生が中学生への指導で自分の考えを整理して再構築できる場にもなると考えています」と新たな挑戦に期待を寄せる。
プロを目指す過程として部活を位置付けるのも1つの考え方。だが、大半の選手は高校や大学で選手に区切りをつける。サッカーを終えた時、何が残っているのか。その問いに、名門・清水東が真正面から向き合っている。
<第1回からつづく>