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かつて日本一の名門サッカー公立校部員が“中学生に勉強を教える”のはナゼ?「清水東は終わった」の声を否定「プロになることだけが…」
posted2023/09/07 11:02
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Jun Aida
中学校の授業を終えた選手たちが集まってくる。集合場所はグラウンドではない。グラウンドの向かいにある学習スペース。入口には「寺子屋」の看板がかかっている。
サッカーのまち・静岡市清水区を象徴する高校の1つ、清水東は全国高校選手権と全国高校総体で合わせて5度の優勝を誇る名門。相馬直樹さん、高原直泰さん、内田篤人さんら多数のプロ選手を輩出している。
社会で活躍しているOBが多くいることも誇れることでは
ただ、清水東は1992年の全国高校総体を最後に全国の舞台から遠ざかっている。練習環境に恵まれ、全国大会を目指して県外からも選手が集まってくる私立優位の構図は近年の静岡県も例外ではない。
「清水東は、もう終わった」
日本一の時代を知る人たちからは厳しい声も聞こえてくる。名門のブランドは失われたのか。全国大会を知るOBで、母校のコーチを17年間務めた齋藤賢二さんは強く否定する。
「全国大会に長年出場できていないことや今はプロ選手がほとんどいないことは事実ですが、清水東サッカー部出身で社会に出て活躍している人はたくさんいます。プロサッカー選手になることだけではなく、社会で活躍しているOBが多くいることも誇れることではないか」
税理士でもある齋藤さんは現在、清水東高校サッカー部および中学生を対象にした清水東ジュニアユースでゼネラルマネージャーを務めている。清水東高校は県内有数の進学校でもあり、選手たちは現役で東北大や名古屋大といった国立大学や、早大や慶大などの難関私立大学に合格している。公立で中高一貫校ではないため、ジュニアユースの選手が清水東高校でプレーするには、他の中学生と同じように受験で合格しなければならない。
「寺子屋」で2時間勉強してから練習を
それでも、ジュニアユース初年度の昨年は30人、今年度は58人の応募があり、各学年18人ほどの枠が激しく争われた。人が集まる最大の理由は、クラブチームであるジュニアユースが、高校サッカー部が体現している「文武両道」を目指し、その環境を提供しているところにある。