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「高校サッカーの指導者にプロは無理でしょ」批判も…J2首位独走、“青森山田高の名将”黒田剛監督は昨季15位の町田をどう変えた? 本人に聞く
posted2023/09/08 11:10
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph by
Hideki Sugiyama
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「高校サッカーの指導者に何ができるのか」の声
昨季J2で15位に沈んだFC町田ゼルビア。今季は青森山田高を全国屈指の強豪に育てた黒田剛監督を指揮官に迎え、悲願のJ1初昇格に向けて順調に歩みを進めている。
9月3日の敵地でのザスパクサツ群馬戦はスコアレドローに終わったものの、33節を終えて勝ち点67。1試合消化が少ないにもかかわらず、2位ジュビロ磐田に勝ち点9差をつけ首位を快走している。
町田は昨年12月、親会社の大手IT企業サイバーエージェント社長の藤田晋氏が、クラブの社長兼CEOに就任。オーナー自らが経営に乗り出し黒田監督を招聘したほか、オフには大型補強を敢行し、J1昇格に向け本気になったと話題を呼んだ。
監督として臨んだ直近6年間の高校選手権で優勝3回、準優勝2回と黒田監督は高校サッカーで圧倒的な成績を残してきた。一方で、シーズン開幕前はプロ指導者への転向について「プロとアマチュアは違う」「高校サッカーの指導者に何ができるのか」と懐疑的な見方も少なくなかった。しかし蓋を開けてみれば町田は4節で首位に立ち、10節以降は一度も首位を明け渡すことなく、ここまで戦ってきた。
「このままじゃダメだ…」「最終目標は勝ち点90」
黒田監督はいったい町田をどう変えたのか?
「じつは自分のなかでは手応えは全くありません。手応えを感じてはいけない、このままじゃダメだという自分への戒めの気持ちだけですね。チーム組織というのは納得感を持った瞬間に停滞するもので、いまは寝ても覚めても、次の試合でどう勝ち点3を取るかばかり考えています。あえていうなら(私自身の)敗戦に対する危機感が人一倍強いことが、町田と他クラブとの若干の差になっているのかもしれません」
昨季J2で優勝した新潟の年間勝ち点は84だった。そこから黒田監督は今季の目標勝ち点を90に定め、シーズンの3分の2にあたる28試合を終えたところで勝ち点を60まで積み重ねてきた。