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“真の文武両道”を目指す名門公立校「余力を残しての勉強は意味がない」「中学生はサッカー以外の経験も…」内田篤人らの母校の試みとは

posted2023/09/07 11:04

 
“真の文武両道”を目指す名門公立校「余力を残しての勉強は意味がない」「中学生はサッカー以外の経験も…」内田篤人らの母校の試みとは<Number Web> photograph by Jun Aida

中学生のサッカー練習メニューを考える清水東高校の生徒

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間淳

間淳Jun Aida

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Jun Aida

 野球、バスケ、ラグビーなど競技を問わず“部活の新たな形”が模索されている。その中で内田篤人や反町康治らを輩出した静岡のサッカー古豪校・清水東が勉学面も含めた新たなチャレンジをしているという。現地を訪ねた《全2回の2回目/第1回からつづく》

 サッカー王国・静岡を代表する名門校、静岡市の清水東高校。全国高校選手権と全国高校総体で計5度の優勝を果たし、日本代表が初めて出場したフランスワールドカップから5大会連続で代表選出を輩出した唯一の高校だ。

 昨年度、清水東では新たな挑戦が始まった。地元の中学生を中心にしたジュニアユースを立ち上げた。コンセプトは県内有数の進学校で知られる清水東の伝統「文武両道」。選手たちは約2時間勉強してから練習に入る。

“偽りのない”文武両道を掲げて

 文武両道をうたう高校サッカー部の中には、実際は「文武分業」の学校が少なくない。サッカーの能力が突出している選手とサッカーをしながら学業の成績が良い選手が“役割分担”し、部全体として文武両道を実現しているケースだ。

 清水東のサッカー部は“偽りのない”文武両道を掲げている。

 その理念と同じように、ジュニアユースの選手にもサッカーと学業の両立が求められている。小学校6年生を対象とするセレクションは1次が実技、2次が国語・算数・英語と3教科の学力テスト。1学年18人を目安とする枠に、昨年度は30人、今年度は58人の応募があった。「サッカーの能力」と「学業の成績」を総合的に判断して選考する。学力が基準に達していなかったため選考を見送った選手もいたという。ゼネラルマネージャーを務める齋藤賢二さんが明かす。

「セレクションの説明会では、保護者の方々に『人工芝など良い環境でサッカーに取り組みたいのなら、他のチームをお勧めします』と伝えています。うちのクラブの目的はサッカーと学業の両立。社会で活躍できる人材の育成ですから」

勉強を教えてもらう側の中学生はどう感じてる?

 目指すのは、社会で活躍できる人材の育成。セレクションに学力試験を取り入れるのは、サッカーに加えて学力にも一生懸命に取り組む姿勢を必要としているためだ。選手たちには、中学校での活動において周りの者が嫌がるようなことにも積極的に取り組むよう勧めている。

「清水東高校サッカー部は中学時代にリーダーだった生徒の集まりです。中学校でも学級委員をするなど、周りを見て、集団をまとめる力を養ってもらいたいと思います。リーダーシップは社会で活躍する上で生きてきます。学校での活動で練習に遅れたり、休んだりするのは全く問題ありません」

【次ページ】 中学生への指導を通して、知識や技術の確認に

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