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大谷翔平「力になれなくてすみません」…東京の名将2人が振り返る、大谷が高校生だった頃「あんな低い弾道であそこまで飛ばすのか」
text by
前田三夫+小倉全由Mitsuo Maeda & Masayoshi Ogura
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/21 06:00
高校時代の大谷翔平。対戦した帝京元監督の前田三夫氏とU-18日本代表で指導した日大三元監督の小倉全由氏がその印象を明かす
前田 前にも話したように、彼は高校時代から高い次元でプレーしている選手だった。もちろん高校あたりまでならば、以前に比べて少なくなったとは言え「4番で投手」というのは珍しくはないんだけれども、プロ、とりわけメジャーでもそのレベルを維持できているというのが桁違いだよね。
東京でポスト大谷を育てる難しさ
小倉 ただ、高校野球で東京を勝ち抜くことを考えると大谷選手のような選手は難しいかもしれませんね。
前田 それはどうして?
小倉 どんなに速いボールを投げてもコントロールがよくないと使いづらいでしょう。それに予選で勝ち上がっていけば、連投ということもあり得る。そうしたなかでは、ストレートのコントロールがいいことと、変化球の精度とキレも同様に高いレベルで求められる。粗削りな投手というのは、「負けるかもしれない」というリスクを考えたら、どうしても起用しづらいですよね。あくまでも、私が持っている彼の高校時代の印象からなんですが。
前田 それは言えるかもしれないね。甲子園出場を目標に掲げたとき、どうしてもある程度まとまった投手のほうを優先して起用するし、投げるだけでなく、走者が出たときの投球術やクイックモーションなども高いレベルで完成されていないと、なかなか試合では起用しづらい部分はあるよね。
小倉 とくに東京のように激戦区と言われる地区は、その傾向が強く出てきますし、仮に継投するとなっても、打者を抑える確率の高い投手を起用せざるを得なくなる。そうなると完成度の高い投手を控えにも選んでしまうのは仕方がないと思うんです。
前田 以前は、突出した選手が投打にわたってチームを引っ張ってきて甲子園出場を果たす、という学校もあった。けれども今は違う。いい選手がいろんな学校に分散している分、どこの学校にも甲子園出場のチャンスが巡ってきている。裏を返せば、そんな選手がいるチームは、そうした学校に足元をすくわれることがあるから、なかなか甲子園出場のチャンスが巡ってこないということもあるのが今の時代、とりわけ東京の高校野球なんですね。
<「東京vs.大阪」続く>