メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平はエンゼルス“悪夢の8月”に何を思う…離脱中のトラウトが「本当に最悪」と嘆き、ネビン監督が“ベンチでキレた”苦しすぎる内幕
posted2023/08/18 17:00
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph by
Getty Images
エンゼルスにとって、8月3日のマリナーズ戦の敗戦は衝撃的だった。
大谷翔平が右手中指のけいれんを起こして4回で緊急降板したとはいえ、中継ぎ陣が踏ん張り、8回には大谷がリードを2点差に広げる40号ソロを打った。
満塁弾を浴びたエステベスは悔しさを噛み殺し…
ホームで連敗を止め、さあここからという完璧な流れ――だが9回に突如、暗転した。
ここまでエンゼルスのブルペンを支えてきた抑えのカルロス・エステベスが乱れ、1死満塁からマリナーズの新人ケイド・マーローに逆転満塁弾を許す。
守護神は膝から崩れ落ち、客席は騒然とした。
試合後のクラブハウスは実に対照的だった。マリナーズ側は新人の劇的な一打に大興奮、爆音を響かせてお祭り状態の“ダンスクラブ”と化した。一方のエンゼルスは、記者のひそひそ声と隣接するシャワー室の音しか聞こえないほど、重苦しい静寂に包まれた。
エステベスは今季初めてセーブに失敗した。当然、いつもの取材時とは違う。ロッカーの前で取材を受ける前に、一度ペットボトルを取りにいって、水をグイッと飲んだ。そして「ふぅー」と呼吸を整えた。悔しさを必死に堪えるための仕草に見えた。
「これが野球だ。つらい負けだが、まだ試合はたくさん残っている。自分には仲間がついている」
何とか声を張って気丈に答えたが、ここからチームは負の連鎖が止まらなかった。
なじみの米記者は「これが、今季のターニングポイントになるかもね」とポツリと言った。
敵将の賛辞も“皮肉”に聞こえる状況に
6連敗で迎えた8月7日の試合前。巨人でプレーした経験もあるジャイアンツのゲーブ・キャプラー監督が、エンゼル・スタジアムでの試合前囲み取材で大谷翔平について問われた。
渋い声で、訥々と話し始める。
「今日、外野でマイク・トラウトがリハビリをしていた。自分が見てきた中で最高の選手だ。そして、ふと思ったんだ。このチームは大谷翔平がいるんだ、と。現時点で、野球界最高の選手だ。パワーがあるとか、本塁打をたくさん打つとか、それだけでなく、彼は全てにおいて一級品。そんな2人が一緒にいるチームなんて、なかなか存在しないよ」