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大谷翔平「力になれなくてすみません」…東京の名将2人が振り返る、大谷が高校生だった頃「あんな低い弾道であそこまで飛ばすのか」
text by
前田三夫+小倉全由Mitsuo Maeda & Masayoshi Ogura
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/21 06:00
高校時代の大谷翔平。対戦した帝京元監督の前田三夫氏とU-18日本代表で指導した日大三元監督の小倉全由氏がその印象を明かす
前田 ただ、「順調に育ったらどんな選手になるんだろう?」という期待はあった。もちろんプロ、そしてメジャーで二刀流を貫いて、どちらでも成功するような選手になるとは思っていなかったから、その点はただただすごいとしかいいようがないんだけどね。
大谷が寄せ書きに記したメッセージ
小倉 私は翌年に日本代表の監督を務めたときに大谷とは一緒のチームでした。三高の監督を(2023年)3月で退任して、監督室の荷物整理をしていたら、そのときの代表選手が色紙に書いてくれた寄せ書きが出てきたんです。大谷からは「力になれなくてすみません」と書いてありましたよ。
前田 大谷らしい気遣いだね。
小倉 このときの彼は岩手県予選の決勝で負けてしまって、代表に呼ばれるまで1ヵ月くらい時間があいていた。同じく日本代表に選ばれた大阪桐蔭、光星学院(青森。現・八戸学院光星)ら甲子園に出場した選手たちと比べると、コンディション的に本調子ではなかったんだと思いますから、仕方のない面もありました。
前田 それはそうだね。ただ、今の球界を見渡しても、トップを走っているのは間違いなく彼でしょう。それを考えると、高校時代の代表とは言え、小倉さんはいいタイミングでいい選手と巡り合うことができたね。それは誇りに思ったほうがいいんじゃないのかな。
小倉 私もそう思っています。
プロでも“4番で投手”を体現しているすごさ
前田 私は高校時代の大谷選手のすごさは、11年夏の甲子園の1回戦で見ていたけれども、その後の活躍は目覚ましいものがある。日本のプロ野球、アメリカのメジャーリーグと進んで、毎年のようにスケールアップしている。長い高校野球監督人生のなかでもこんな選手は今まで見たことなかったよね。
小倉 二刀流で21年シーズンのメジャーMVP。「大谷ルール」と呼ばれるメジャーのルールもできて、今年開催された第5回WBCでも胴上げ投手にしてMVP。もうやっていることの次元が違いすぎて、自分たちの想像していることをはるかに超えていってしまっていますよね。