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甲子園「東京は大阪に14勝29敗…」東京の名将2人が考えた、“東京が勝てない”理由「東京の人間は『関西に負けるな』とは教えられていない」
posted2023/08/21 06:01
text by
前田三夫+小倉全由Mitsuo Maeda & Masayoshi Ogura
photograph by
Naoya Sanuki
1987年以降、センバツで東京は対大阪で勝ちなし
前田 甲子園ではよく「大阪と東京の学校が対戦すると、大阪のほうが強い」と言われるけれども、この資料(資料3)を見るとたしかにそう言えるね。春と夏のデータを見比べても、夏は東京8勝、大阪9勝と拮抗しているが、春は東京の6勝に対して大阪が20勝と、東京勢をまったく寄せつけていないよね。
小倉 しかも春については、私が関東一の監督をやっていたとき(1987年)に、2回戦で市岡と当たって勝っていますが、それ以降36年間(2023年7月現在)まったく勝っていないんですね。12連敗もしているなんて驚きました。
夏は2006年に早稲田実業が斎藤(佑樹)を擁して大阪桐蔭に勝って以降、16年間勝利がない。夏は大阪との対戦数が少ないとはいえ寂しい数字です。前田先生は、東京と大阪の選手の違いをどうご覧になられていますか?
前田 私が大学生の頃、全国から集まった優秀な能力を持った選手を見たときに、「関西の選手は関東、とりわけ東京とは違うな」というのを肌で感じたんですね。関西の選手は粘り強く、ちょっとやそっとではひるまない、強気な選手が多かったのに比べ、関東の選手はそうしたものが欠けているように感じました。
そこで私は帝京の監督に就任したときに、まっ先に考えたのが、「関西の学校と試合をすること」だった。東京を含めた関東の学校にはない戦い方というものを学んでそういった要素を吸収しようと思ったんです。当時の帝京はまだ弱かったけれども、PL(学園)を含めた大阪の強豪校はもちろんのこと、東洋大姫路(兵庫)などとも戦ってレベルの高い野球を経験させていきたかった。
関西は1点を取るのにも執念がある
小倉 自分も1985年に甲子園に出たときのキャプテンの寺島(一男)、エースの木島(強志。日産自動車)らが下級生だったときに、東洋大姫路に練習試合を申し込みました。試合が終わったあと、梅谷(馨)監督(2006年11月死去)に、「東京の学校との違い」について聞いたんです。すると梅谷監督から言われたのが、「関東の野球は小手先でサッとボールを捕りにいく野球だ。関西は1点を取るのにも執念がある。スクイズで取ると決めたら必ず決めるし、ボールをグラブにいったん収めたら絶対に離さない。それだけの執念がある」。たしかに一理あるんです。関東の人間は勝負に対する執念深さに欠けているのに対して、関西は「関東の人間に負けてたまるか」という強い気持ちを持っている。これって関東の人間からするとわからない感覚かもしれませんね。