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賛否両論噴出「クーリングタイム」問題 甲子園の暑熱対策はタテマエになっていないか? 出場校監督が語る“ホントのトコロ”
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/13 17:05
クーリングタイムは5回のグラウンド整備の10分間を利用して、選手の体の冷却や水分補給など暑さ対策に特化した取り組みをする時間だ
クーリングタイム後の6回は「先行有利」の声も…?
大会5日目(8月10日) 最高気温35.1 平均気温31.4
◆平川敦監督(南北海道・北海高)
「どういう環境かわからなかったので、とりあえず選手には着替えを多めに持ってこさせました。汗をかいたまま涼しい場所に行くと服が冷えます。血液を冷やすのはいいんですけど筋肉が冷えるのはまずいので、選手には『服と体が乾いた状態でグラウンドに出るようにしなさい』とは伝えていました」
◆川崎絢平監督(大分・明豊高)
「よく『6回に点が入りやすくなる』とか『足が攣る』と言われていますけど、やってみないと分かりませんでした。一旦、球場の中のスペースで水分を摂って体を冷やしてから選手をすぐにベンチに戻し、外の熱気で休ませるようにして。早い選手だと3分くらいで外に出ていましたし、試合に出ていない選手はずっとベンチにいたりしました。対策はできていたと思いますが、それでも全身が攣ったような状態になった選手が出たので、これからいろいろと考えていきたいと思っています」
大会6日目(8月11日) 最高気温34.7 平均気温30.3
◆森林貴彦監督(神奈川・慶應義塾高)
「10分間が長すぎるという感覚はないですね。練習から実際に試していたので、当日はすんなり入れたと思います。5分間をベンチ裏のスペースで体を冷やす時間に充て、3分間はミーティング。残り2分になったら外に出る。1回、体温や気持ちを落ち着かせて、両方を徐々に上げていく、という感じでしょうか。このクーリングタイムを導入している意図は理解していますし、いいとは思っています」
大会7日目(8月12日) 最高気温35.1 平均気温30.9
◆仲井宗基監督(青森・八戸学院光星高)
「うちの試合は第1試合で比較的、涼しかったので特に何もないんですが、先攻のほうがいいのかな、とは思いました。後攻だとクーリングタイムが終わったらすぐにグラウンドに出て守らなければならないので、足が攣る選手が出てしまうのかもしれませんね。大会初日に体の不調を訴える選手が多かったのは、開会式から間もない時間で試合をした影響も多少は関係しているんじゃないでしょうか」
◆持丸修一監督(千葉・専大松戸高)
「私は全然頭にありませんでした。みんな10分間の使い方が気になっているみたいで、この時間が終わると流れが変わると言っているから『そうなってほしくないな』と思っていたら、6回に3点取られて同点にされてしまいました」
※気温は神戸地方気象台の観測データを参照
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現場や世間の反響を受け大会を主催する日本高校野球連盟などは、クーリングタイム中も体を冷やすだけでなく、ストレッチなどで体をほぐすことを呼びかけるようになった。
大会初日のように、選手を守るべき制度が逆効果となっては本末転倒である。生かすべきは当事者たちの声だ。規則に縛られることなく、1試合、1イニング単位で柔軟な対応をしてほしい。そうすれば、クーリングタイムは必要不可欠なシステムになるはずである。
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