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なびく髪、週休2日制、異色のユニフォーム…甲子園初出場・浜松開誠館の「高校野球離れ」した柔軟さ 元プロ監督は“筋肉>技術”改革に着手
posted2023/08/11 11:04
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
レッドとチャコールグレイのコントラスト。
高校野球というよりは、社会人野球やプロ野球のチームにあるようなユニフォーム。この浜松開誠館のシンボルをデザインしたのは、監督の佐野心自身なのだという。
「前任校がヤンキースのピンストライプを導入していたので、今度はダイヤモンドバックスでいこう、と。普通のグレイよりチャコールぐらいのほうがいいというか、バランスを考えました。かっこ悪いより、かっこいいほうがいいですから」
斬新なユニフォームと調和するような、選手たちのなびく髪。ここにも佐野が制限を設けることはない。
「全く興味はないですね。誰がどういう髪型にしようといいんじゃないでしょうか」
その”らしさ”は、創部26年目にして初めて立った甲子園にもあった。
自由な気風が漂う浜松開誠館の初陣
東海大熊本星翔との初戦。今年から導入された、5回終了時点に与えられる10分間のクーリングタイム中も、各校が対策に悩まされるなか佐野は堂々としていた。
「選手と一緒にいなかったので。私は私でクーリングタイムをしていました。足が攣った選手もいないので、特になにもないです」
浜松開誠館は、全国の初陣で鮮やかな逆転勝利を収めた。
元号が令和となってから甲子園で勝てていなかった静岡県勢に久方ぶりの勝どきを轟かせたのは、どこか自由な気風が漂う、今までの高校野球とは少し違うようなチームだった。
「青空があって、緑の芝生があって、観客がいて、旗がなびく様子をスローモーションのように眺められる時間というか、流れる校歌を聞いて幸せだなと感じました」