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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
久保建英が駆使「軸足抜きキック」って何? 2つの利点って? 中西哲生が三笘薫の母校指導…怪物・平山相太コーチや選手もビックリ!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/07/17 11:01
ソシエダ、日本代表で活躍する久保建英。彼の駆使する「軸足抜きキック」が、三笘薫の母校・筑波大学で磨かれているという
「こちらがターンを試みると、相手チームの選手たちは『後ろ重心』(かかとに体重が乗った状態)になる。つまり、相手の動きに一瞬の遅れが生じます。だからもしターンが失敗してガシャガシャとなっても、ボールを奪い返しやすい。哲生さんからこの説明を聞いて、ターンが怖くなくなりました。
これ以外にも哲生さんは『パスを受けたときは、肩をしっかり開け』といったアドバイスをしてくれている。肩が開かれていると、パスを出せるコースが増えるので相手が読みづらくなり、前へパスを通しやすくなる。去年までは外回りでボールを動かし、そこからクロスを入れる形が多かったんですけど、今年はチームとしてかなり縦パスを入れられるようになりました」
小井土監督の“しがらみにとらわれないビジョン”
2対3で敗れた天皇杯1回戦のブリオベッカ浦安戦や0対1で敗れたアミノバイタルカップの順天堂大学戦のように、筑波大学のパフォーマンスにはまだまだ波がある。
それでも山内が言うように、中央攻撃の回数が増えていることは間違いない。2017年以来の関東大学リーグ制覇はもはやノルマと言っていい。
それにしても筑波大学のような超名門が、なぜ日本サッカー指導者界では異端的存在の中西哲生をテクニカルアドバイザーに招いたのだろう。いくら久保建英らを指導している実績があるとはいえ、OBから反発を招いてもおかしくなかったはずだ。
今回決断を下した小井土監督は、しがらみにとらわれない大きなビジョンを持っていた。
「我々は『開かれた組織』ということが一番のコンセプトにあり、たとえば蹴球部に入部を希望する選手は全員受け入れています。学閥や理論の違いで人材を受け入れないというスタンスは元々ないんですね。
戦術の言語化については海外の影響もあって日本全体でかなり進んでいると思いますが、技術の言語化については僕自身あまりできていませんでした。
あえてしない方がいいかなと思う部分もあった。たとえば三笘薫に技術的なことを言っても、制限してしまうだけかなと。ただ、中西さんの取り組みを見ていると、再現性を出すという点で言語化に大きな意味がある。
これは選手だけでなく、指導者を目指す大学院生たちのための取り組みでもあります。子供たちに技術を教えるときに型や軸があると、そこからさらに発展させられる。2年前からGKコーチのジョアン・ミレッさんに来てもらっているのも同じ理由です。
選手が巣立つのと同時に、正しい知識でサッカーを楽しく教えられる指導者を増やすことが目標。ここから日本サッカーの文化をつくっていくんだというつもりでやっています。
サッカーを学ぶなら筑波がいいよね、日本サッカーに貢献するなら筑波がいいよねというサイクルをつくりたいと考えています」
小井土監督の日本サッカーへの想い、平山コーチの自主性を伸ばす指導、そして世界で唯一無二の中西メソッド――。
近い将来、筑波から何かが起きるに違いない。
<#1からつづく>