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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
三笘薫ら輩出の名門・筑波大に“久保建英らを育てた中西メソッド”注入「最初は疑いというか…」1年生エースが「決定力は伸ばせる」と確信したワケ
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFP/JIJI PRESS
posted2023/07/17 11:00
筑波大学サッカー部の小井土正亮監督。三笘薫の母校が先進的なサッカーを目指しているようだ
中西は状況に応じてプレーの実行を中止することを「キャンセル」と名付け、練習のいたるところにそのエッセンスをちりばめている。
たとえばシュート練習で定番になっているのが、中西が「キャンセル」と言ったらシュートモーションをストップし、切り返して逆の足でシュートするというメニューだ。
(1)攻撃者は中西にボールを当ててリターンをもらい、ドリブルで切れ込む。そのまま中西がDF役になる。
(2)もし中西が何も言わなければ、攻撃者は右足でシュート。
(3)もし中西が「キャンセル」と言ったら、攻撃者はシュートフェイントで切り返し、左足でシュートを打つ。
いつ「キャンセル」と言われるかわからないので、攻撃者は思いっきり足を振ることができない。それによって力みが消え、正しいフォームでシュートを打てるようになる。
もちろん相手の逆を突く効果もある。「キャンセル」は決定力を高めるうえで不可欠な概念だ。
取材に訪れた日も、中西がDF役となり、内野、半代、山内、徳永が熱心にこのシュート練習に取り組んでいた。
姿勢を変えるだけで、トラップでボールが止まる
また、中西は姿勢についても指導をしている。
内野は筑波大学に入った当初、立っているときに頭が少し前に出て、やや猫背になっていた。これだとトラップのときも頭の重みをうまく使えず、ボールが止まりづらくなってしまう。首をすっと上に伸ばし、重心を高くする方が体を操りやすい。
内野は中西からこんなアドバイスを受けた。
「首の位置をすごく言われて、それを改善するには鎖骨のまわりをほぐすといいよとアドバイスしてもらった。
実際、鎖骨のまわりをほぐすと自然と首の位置が改善され、トラップでボールが止まるようになった。首が正しい位置になり、脱力してプレーできています」
「決定力は間違いなく伸ばすことができる」
内野は身長186cmのいわゆる大型ストライカーだ。ただ、中西からすると、そのパワーを効率良く使えていなかった。
内野は重力についてもアドバイスを受けた。
「ボールを受ける前に軽く飛ぶ『プレジャンプ』をすると、トラップが止まりやすいだけでなく、ポストプレーの強さも増すと言われました。78kgの体重が上に飛んで落ちてきたら、相手は横からぶつかってもそのエネルギーに簡単に勝てないと。もとからある体重をうまく使えるようになった。
哲生さんの指導によって、どんどんうまくなっている実感がある。哲生さんに出会ってから考えが変わった。きちんと言語化すれば、決定力は間違いなく伸ばすことができます」
内野は各年代で日本代表に選出されており、6月にはU-19日本代表のフランス遠征のメンバーに選ばれた。将来A代表に入る確率は極めて高い。
小井土監督の指導により、筑波大学から三笘薫という世界に誇るドリブラーが生まれた。今度は世界に誇るセンターFWが生まれるかもしれない。
<#2につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。