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「まるで太ったヒキガエルだ」伊良部秀輝を名物オーナーが口撃…2人の話には続きがあった「ふてぶてしくも危うい」私が見た“悪童と呼ばれた男”
posted2023/07/06 11:02
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph by
JIJI PRESS
今年の7月が伊良部秀輝の十三回忌にあたる。ヤンキース在籍時代に駆け出しの記者だった私は、ある記事を書いたことで伊良部の逆鱗に触れた――。
電撃メジャー挑戦、メディアとの確執、オーナーの批判……激動のメジャー時代を追った記者が綴る「伊良部秀輝の真実」〈全3回の#2/#1、#3へ〉
電撃メジャー挑戦、メディアとの確執、オーナーの批判……激動のメジャー時代を追った記者が綴る「伊良部秀輝の真実」〈全3回の#2/#1、#3へ〉
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怒る伊良部、ともに残ってくれた“ある記者”
「これは何だ」
伊良部秀輝は、筆者が書いた記事に腹を立てていた。どんな会話を交わしたのか、具体的にはもう覚えていないが、こちらが何かを言えば言うだけ向こうの怒りは収まるどころか次第に大きくなっていき、話し合いはいつまでたっても終わらなかった。恐らく自分1人だったらどう対処していいかわからず途方に暮れていただろうが、サンケイスポーツの宮川達也記者(当時)が、ただならぬ雰囲気を察して一緒に残ってくれていた。
気がつくと、クラブハウスにはもう誰もいなくなっていた。他の選手たちは全員が帰宅し、他のメディア関係者も全員引き上げた。伊良部と宮川記者と自分と、伊良部の通訳のジョージ・ローズ氏の4人が残っているだけだった。
セキュリティーの職員から「もう閉めるから出てくれ」と言われ、ようやくクラブハウスを出ることになったのが、間もなく日付も変わろうかという時間だったと記憶している。しかし話はそれでも終わらず、4人で出口へ向かう通路を歩きながら会話が続いた。当時は古い造りの旧ヤンキースタジアムで、選手のクラブハウスがある地下は通路が入り組んでおり、出口まで距離もあった。そこを歩いているうちに伊良部と宮川記者の言い争いがエスカレートし、通路を曲がった途端にその出来事は起こった。