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F1の“シャンパンファイト”で使われるスパークリングワインって何円なの? 契約料は「年間6億4000万円」の報道も…F1の気になる“お金の話”
posted2023/06/04 06:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Getty Images
ない、ない、ない……。筆者と編集者は焦っていた。WBC優勝に当連載もあやかろうと、シャンパンファイトに登場したスパークリングワイン(米『KORBEL』社、約2000円)に着目したが、どこを探しても品切れなのだ。
5月に入ってもオンラインショップや店頭には見当たらず、いよいよネタ枯れの危機が迫ってきたが、こちらとしてはシュワシュワしたくて仕方がないのである。
筆者がシャンパンファイトを知ったのは、大学時代にブームとなったF1を通じてだった。“音速の貴公子”アイルトン・セナが美酒を浴びた、1991年の日本グランプリが懐かしい。
ここで妙案がひらめく。WBCがなければ、F1のお酒を飲めばいいではないか。
契約料は“年間6億4000万円”とも
シャンパンファイトの始まりについては諸説あるが、F1起源説もある。F1が誕生した1950年のフランス・グランプリで、地元企業の『モエ・エ・シャンドン』が優勝者にシャンパンボトルを贈呈。レースとシャンパンが邂逅を果たす。ドライバーたちは当初、シャンパンを飲んでいるだけだったが、それが1960年代半ば、ル・マン24時間レースの表彰式で泡を飛ばしての“ファイト”に発展。広く定着することになった。
世界有数のシャンパンメーカーであり、日本でも通称“モエシャン”でおなじみとなった同社は、F1公式シャンパンサプライヤーとなって1999年まで表彰台を盛り上げ続けた。その後は『マム・コルドン・ルージュ』、1年限りのモエシャン復帰をはさんで、『カルボン』が2021年まで公式サプライヤーを務めた。ちなみにマムが支払った契約料は、年間6億4000万円と報じられた。一瞬「高い!」と思ったが、表彰台にブランド名が入り、画面いっぱいに商品が掲出されることを思えば、それだけの価値があるのだろう。
さて、現在公式サプライヤーとなっているのは、イタリアの『フェッラーリ・トレント』社のスパークリングワイン。従来はフランスのシャンパンが用いられていたが、2021年から初めて外国産が用いられることになった。
WBCをあきらめた私たちが、オンラインで手に入れたのは同社のスパークリングワイン、3000mlボトル1本4万円也。実際の表彰式で使われるものだ。ネタ枯れの危機をまぬがれ、担当編集者と安堵の乾杯をする。口当たりはほんのり甘かったが、次の瞬間、キリッとした辛口が風のようにのどを駆け抜けていった。